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「企業格差は人材格差」
 7月中旬、富山市に本社を置く総合機械メーカーのF社の会長が、「富山で生
まれて、地方の大学に行ったとしても、私は極力採らない」「閉鎖的な考えが
強い」「富山で生まれて幼稚園、小学校、中学校、高校、F社。これは駄目で
す」と決算発表の会見の場で発言、大きな話題になり物議を醸した。

 この報道に接して、私にはディジャブ感があった。私は細々と採用支援、採
用コンサルタントのようなものをやっているが、これまで新潟2社、石川1社、
富山3社、福井1社、長野2社と、北信越地方の企業の採用支援をした経験があ
る。

 実は前述した計9社のうち、6社の社長・役員、人事部長クラスから、「○○
で生まれて幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と、同じ風景、同じ空気、同
じ友だち、同じ食い物、家、道…とにかく22年間、同質化した環境の中での暮
らした学生は国立大学出身でも、できれば採りたくない。
 採りたいのは大半を県外で過ごした人、最低でも大学4年間は東京や大阪の
大都市圏のスピードの中で揉まれた人」と言われたことがある。F社会長の発
言趣旨とはニュアンスは異なるが、言わんとしていることは同じ。

 人は見たもの、聞いたもの以上の発想は出てこない。見たもの、聞いたもの、
体験・経験、蓄積してきた知見などが多種多様で豊富であるほど、それを活用
してのアウトプットは量・質とも異なるに違いない。

 組織となれば、そうした多種多様な思考や視点の組み合わせは無限で、相乗
効果は計り知れないだろう。F社会長の発言に賛同も同調も非難もするつもり
はまったくないが、そうした仮説の下の発言であることは容易に推測できる。

 古典的な言葉で恐縮だが、「企業格差は人材格差」より高付加価値を創出で
きる人材を求めるが故に多くの経営者が考えていることでもあるのだろう。


             (2017/09/04 人材開発メールニュース第939号掲載)


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