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満足を追求する、不満足を与えない
 日頃お手伝いしている流通業の現場で、堅調に売上は伸びているものの、業
務量が増え、慢性的な人手不足も重なり、サービスの質が落ちていると危機感
を持っている現場が増えています。中でも注意深く見ているのは、一見すると
クレームもあまり起こっていない現場で売上が伸び悩む、売上が落ち込むケー
スがあります。

 売上が伸び悩む・落ち込む要因の一つとして、お客様に不満足を与えないよ
うな対応をしていることが挙げられます。もう少し詳しく言えば、以前はお客
様へ満足を与えるサービスを追求するように取り組んでいたが、気が付くとお
客様に不満足を与えないような対応になっていたということがあります。

 何となく感じ取っていただけると思いますが、お客様へ満足を提供しようと
言うアプローチとお客様へ不満足を与えないようにするアプローチは全く異な
ります。前者はできるだけお客様に関わろうとしますが、後者は、極端に言え
ば、お客様との接点を効率的に考え、動くようになります。不満足を与えない
という観点で考えると、言われた通り、リクエストされた通りに対応すること
が主となります。当たり障りのない、余計なことはしないと言った対応になり
がちです。
 利用者側からすると、特にリピート性が高い現場では、不満ではないものの
何となく最近サービスが悪くなった(落ちた)と考え始めます。改善の兆しが
見えず、他に代替のサービスや場があれば、新しい所に移っていくことはよく
あります。

 特に過去にサービスが良い、サービスレベルが高いと評価された現場ほど上
記のような現象が起こります。新しく採用された方は、これまでの評判を落と
さないように極力当たり障りのない対応を繰り広げる→徐々に客足が減ってい
くという悪循環が起こります。

 それを防ぐためには、絶えず現場の状況を観察する、関わることが必要にな
ります。現場に口出しすると言うことではなく、現場を見て、客観的に現場に
伝える、フィードバックすることが必要です。

 今後益々、人手不足感が強まる中で、現場の業務、現場を支援する業務、い
ずれもどこを削ってどこを増やすかが問われます。忙しいからこそ、勇気を持
って削る領域と持続させる領域の選択が迫られます。その選択のやり方・あり
方が、その組織・現場のパフォーマンスの鍵を握っていると言えます。


             (2015/12/21 人材開発メールニュース第856号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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