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プレースキルよりもゲームスキル
 先日チームスポーツのトレーナーを長年担当されている方とお話をする機会
がありました。その中で、怪我をする選手が多いチームという話題が出ました。
怪我もすぐに復帰できるレベルであれば挽回できますが、怪我が原因でプレー
そのものができなくなることもあります。そういう怪我の頻度や重度が大きい
チームは、選手や監督・コーチがプレースキルに傾倒し過ぎているという話題
でした。

 チームスポーツでは、プレースキルとゲームスキルが両方大事だと言われま
す。呼び方は様々ですが、プレースキルとは、個々人やチームなどの技術・技
能、球技であれば打ったり、蹴ったり、走ったり等、文字通りプレーするため
の技術・技能を指します。一方、ゲームスキルは、試合運び、戦術と言われる
ような、チームとしてどう保有するスキルを発揮したり・配分したりすること
を指します。
 明らかに体力的に劣るチームが、試合に勝利する場合の多くは、運とゲーム
スキルによることがほとんどです。また、よく試合巧者と表現されるチームは、
監督やコーチがゲームスキルの高いプレイヤーを上手く使っているという印象
を受けます。

 当然、プレースキルの方が、わかりやすい(測りやすい)ため、身に付けや
すく、教えやすいという特徴があります。実際、チームスポーツで何かを教え
ている場合は、プレースキルに関して教えている場面が多いと言えます。

 一方、ゲームスキルは、試合のレベルが高度になればなるほど、重要になり
ますが、わかりにくい、個よりも組織に浸透させないと効果が高まらない(一
人ではなく、チーム全体で取り組まないと機能しない)こともあり、スキルア
ップに時間がかかると言えます。逆に言えば、見えにくい、時間はかかるが、
チームで共有されるとそのチームの独自性も加味され、大きなアドバンテージ
にもなります。

 前述の怪我の話になると、例えば試合中に何かミスを犯した場合、選手も周
囲もプレースキルが足りなかったと考え、さらに練習の頻度や密度を上げるチ
ームは、怪我が多くなります。勿論、プレースキルが不足していたのかもしれ
ませんが、実際は、個々のスキルの問題では無く、何かしら力を発揮できない
状況があったのかもしれません。チームでカバーすると言う選択肢を考えずに
それを全て個々のスキルの問題にしていると、悪循環に陥ることになります。

 通常の組織運営においても一人ひとりの能力を高めることは勿論大事ですが、
組織の目的達成に向けてゲームスキルを高めていくことも必要です。個々のス
キルを高める人材はたくさんいますが、ゲームスキルを高める人材が圧倒的に
不足しています。
 人的資源の有効活用が求められる時代においては、今まで以上にゲームスキ
ルを高めるような発想やアプローチが求められると言えます。


             (2015/10/12 人材開発メールニュース第846号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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