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マルチタスクと未完了
 多くのスポーツには基本姿勢と言われるものがあります。特に様々な方向へ
動く競技では、動きだし直前の静止した姿勢・構えが大事だと言われます。基
本姿勢を保つことで、あらゆる方向により迅速に対応することができるように
なります。どちらかに少し重心が流れた状態のままでいると、逆方向に動く時
にはミスやロスが起こりやすくなります。何か動作をした後に、より早く基本
姿勢に戻ることが次の動作に移る最善の方法です。

 話は変わりますが、今年も新入社員を受入れの時期になりました。ある新人
育成担当の方と話していた時に「最近の新人は、マルチタスクに慣れているけ
ど、未完了が多いよね。」という話題で盛り上がりました。
 マルチタスクは、同時並行でいくつかの作業を行うことですが、物心ついた
頃からパソコンがある環境で育った世代でもあり、何かをやりながら別のこと
もするというマルチタスクに関する適応度は高い印象を受けます。その一方で
未完了は、一つの作業が完了していないことですが、確実に終了せずにそのま
ま別の作業に移っていることが以前に比べると目立つ感じです。
 例えば、何か業務を依頼しても報告が無いまま、次の作業に移っているので、
依頼した側は終わっているのかどうかわからず、結果的に全体の作業が遅れる
ようなことがあります。

 基本的なコミュニケーションにおいても、聞いても話してもしない基本姿勢
に戻れば、聞き始めることも、話し始めることもスムーズにスタートできます。
しかし、多くの職場でコミュニケーションのギャップが生じるのは、基本姿勢
に戻らないまま、次の作業に移ることも一因です。聞き終わらないままに次に
進めたり、話し終わらないままに次に進めたりすると、当然ギャップが生じ、
微妙に人間関係にも満たされない感覚が積り始めます。
 満たされない感覚・関係が続くと、徐々にコミュニケーションの量も減り出
し、さらに満たされない感覚・関係が増大する悪循環に陥ります。

 何か動いていなければ仕事をしていないイメージもありますので、瞬間的に
何もしていない状態(基本姿勢)に戻るのは、意識付けが必要です。できるだ
け新人の時期に、作業終了の基本形や基本姿勢を身に付けることは、今後益々
必要ではないでしょうか。


             (2015/04/13 人材開発メールニュース第822号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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