Back Number

就職支援の現場から・2014年夏(2)
 今年の就職戦線で内定を取り、既に就活終了宣言をした学生から、いきなり
「相談したい」メールが舞い込む。事情は会ってからということで、大阪の仕
事のついでに名古屋で下車、駅の喫茶店で待ち合わせた。

 用件は「今年、卒業せず、留年したい」とのこと。別段、単位取得に心配は
なく、「今年落ちたある会社を来年、再受験したい」というのが留年の理由だ。
この学生、今年の教え子の中で一番ブレイクスルーした学生で、授業や合宿で
話しているうちに、何となく適性が見えたので「○○業界を受けてみたら」と
言ったら、本人も感じるものがあったのか、その業界を勉強し、こちらの指導
に沿って自分なりの工夫を加えて、歴戦連勝、○○業界だけで実に大小8社か
ら内定を獲得した強者である。5月下旬、その中で最大手に決めたところだっ
たので、突然の相談事に、こちらがあたふたしてしまった。曰く、「落ちた会
社がとても魅力的で、諦めきれない」。

 ところで、この学生のような言い分はレアケースかというと、よくよくアン
テナを張ってみると、実は今年の大きな社会現象になっているという。この学
生のように「諦めきれない」のもいるが、現在は内定を持っているが、それが
やや不本意で、売り手市場の今なら(来年なら)、「もっといい会社から内定
がとれる」と考える学生が多いそうだ。事実、私の関係する大学に問い合わせ
ると、二桁近い学生がそうして意向で、相談に来ているという。

 しかし、今年と来年度とは環境は確実に変わる。まず就活の時期が後倒しに
なる新就職協定(倫理規定)が始まる。なんとも予測はつかない。そして企業
スタンスも…。

 因みにこの学生が落ちた企業は中途採用も多い。その点と先々の環境が読め
ないこと、この学生の内定先は頑張れば、かなりのキャリアが身に付くことを
説明して納得してもらったが、時代の風は人を惑わす魅惑の風でもあるようだ。

             (2014/08/25 人材開発メールニュース第790号掲載)


Go to Back Number Index
Go to Top Page