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全社員ヒアリングと組織開発
 ここ数年カウンセリングをベースとした組織開発に携わる機会が増えました。
中小企業を対象に、毎月数名ずつ全社員に対してカウンセリングを実施してい
ます。例えば50名の企業であれば、毎月10名ずつ実施し5か月で全社員を終了、
これを繰り返し行っています。対話中にこちらからアドバイスすることもなく、
ひたすら日々の仕事にどう捉え、どう進めているかを聴き出すことに注力して
います。対話の中から出てきた人と人との関係性における課題を整理しながら、
改善を進めています。

 導入前によくトップの方から「うちの従業員は、あまり話さない、話せない
人が多いけど大丈夫?」と聞かれることがあります。通常少なくとも30分以上
はヒアリングを行いますが、時間内に終わることは少ない感じです。話し出す
までに時間がかかる方はいらっしゃいますが、あまり話さないと思われている
方ほど、長引くことが多いようです(例外もありますが)。

 この方法をやり始めて、対話・会話の機会に飢えている人がたくさん存在す
ることを改めて確認できました。ITを中心にコミュニケーション手段は便利に
なっています。本来はより双方向の情報伝達が進むように導入されたツールが
返って一方通行を促進しているような例もあります。いずれにせよ、組織の中
には、話す機会を失った分だけ、眠ったままの情報があります。

 本来であれば、現場の情報を経営に反映させる連結機能は、いわゆる管理職
の役割です。しかし中小企業では、階層が歪で、またプレイングマネジャーと
して期待されることも多く、自分のことで精一杯と言われるマネジャーも少な
くありません。管理者への負荷が高まり機能不全を起こす一方で、経営を取り
巻く環境変化のスピードが速くなり、現場に眠っている良い情報・悪い情報は、
組織体の存在までも左右するものになっています。

 コミュニケーションツールが便利になればなるほど、コミュニケーションに
偏りが発生する可能性も増えます。組織内でどのようにして人と人の会話を確
保するか、より偏りが少ないコミュニケーションを確保できるか、人材開発、
組織開発においても益々大きな課題になると言えます。

             (2014/03/31 人材開発メールニュース第771号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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