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移動の現場から・2013年夏
 仕事を終えて新幹線「新神戸」に。
 乗り込む新幹線の時間が迫る中、改札前の売り場で飲み物や食べ物を買い物
カゴに放り込む。予定したものをカゴに入れてレジに並ぶ。少し待って自分の
順番に。「すみません。時間がないので早めに」と声をかけて会計をお願いす
る。すると、目を疑うばかりのスローモーな動き、手間取る、ではなく本当に
「遅い!」と感じるスピード。

 睨めつけんばかりにレジ係の女性を見る。胸から名札が下げられており、そ
の名札の下にもう一枚、手書きのカードがぶら下がっている。会計に手間取っ
ている間に、そのカードを読む。
 『皆様の快適な旅を応援します。私の元気な挨拶と笑顔で』
 心の中で呟く「嘘だろう…」。しかし、本当にそう書いてあったのだ。信じ
てくれ。私はこのレジに並んで、この女性の声を一度も聞いていない。まず、
「いらっしゃいませ」がない。「時間がないので…」の後に、「かしこまりま
した」も聞いていない。

 笑顔?購入品を袋に入れている姿は見ているが、この女性はずっと下を向い
ていて顔すら見せない。結局、この女性は「ありがとうございます」も言わず、
もしかしたら何かを言ったかもしれないが、申し訳ないが時間がやばくなった
ので、荷物を受け取ると駆け足で改札に向かったので聞こえなかった。

 きっと朝から多忙で疲れていたのだろう。あるいはもうすぐ勤務交替で、心
ここにあらずの状況だったのかもしれない。もしかして私が「すみません。時
間がないので早めに」と言ったので、プライドを傷つけたのかもしれない。

 しかし、たとえ理由はどうであれ、自分で書いたメッセージに反する行動を
してはいけない。会社から言われて耳に心地よい言葉を並べて表面的に繕った
ならば、かえって客に反感を買う。
 次は「本物の笑顔で」迎えて欲しいものだ。

             (2013/08/26 人材開発メールニュース第741掲載)


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