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就活する特権や楽しみ
 厚労省・文科省が5月17日に今春卒業の大学生の就職率(4月1日現在)が、
前年同期から0.3ポイント増え、93.9%と発表した。
 リーマンショック後に採用を手控えていた企業が、若手の人材不足を補う、
学生の大企業志向の緩和(いわゆる「身の丈就職」)、それに加えてアベノミ
クス効果(最近お決まりのフレーズ)が加わったという。その割に、0.3ポイ
ント増はややお寒いが、まずは喜ばしい限りだ。

 その情報を伝えている読売新聞5月17日夕刊の社会面に「就活を大学が後押
し」という記事が載っており、首都圏の大学のさまざまな試みが紹介されてい
た。

 その中で、中堅のR大学が、人材紹介会社とタイアップ?して、紹介会社が
学生に企業を紹介し、女子学生が内定を得たという記事があった。その中で、
件の女子学生の「合同説明会は興味がない会社ばかりだと魅力がないし…」話
が紹介されていた。

 その記事を読んでいて、紹介会社も商売だし、企業側も採用コストが抑えら
れる、学生も自分に合う企業を紹介してくれると期待感が持てると解説されて
いたが、まあ、私には「合理性」しか感じられなかった。学校は企業求人開拓
や生徒指導を紹介会社とのタイアップにすり替え、学生は魅力のない(どうし
て魅力がないか、何をもって判断しているのだろう)企業ばかりの合同説明会
に他学生同様、足を運び多くの情報の中から暗中模索の中で、自分の将来を見
出していく就活としての「通過儀礼」みたいなものを端から放棄しているよう
にしか、私の目には映らない。

 仮に入社した会社で壁にぶつかったとき、この学生は他責せずに、自分のこ
ととして考えられるだろうか。もちろん、理系など研究室を通じて内定が出て、
就活をまったくしない学生もいるから、通過儀礼が絶対とはいわないが、新卒
として就活する“特権”や楽しみを感じないまま就職し、悔いはないのかと思
ってしまう。

             (2013/06/03 人材開発メールニュース第730掲載)


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