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空気を読む・コンテクストを考える
 先日、とある企業の中堅社員研修で「空気を読む」というテーマで討議して
いました。最初は普通でしたが、途中でだんだん話がかみ合ってないことがわ
かってきました。どうやら「空気を読む」という言葉の捉え方、イメージが受
講者の間でバラバラだったようでした。

 具体的に言えば、「空気を読む」をポジティブなイメージで捉えている人と
ネガティブなイメージで捉えている人が半々で、ポジティブ派の主張は、「周
囲を意識する、周囲に対して配慮ができる」というイメージ、一方ネガティブ
派の主張は、「周りに合わせるだけ、本音を言わない、表面的」というイメー
ジでした。当然、言葉の意味が違うので、「空気を読む」ことを積極的に取り
組もうという人とそうでない人がいて、同じ言葉を使っているのに通じない、
それこそ?変な空気が流れていました。

 日本は世界で最もハイ・コンテクスト文化の国だと言われています。
 「ハイ・コンテクスト、ロー・コンテクスト」は、アメリカの文化人類学者
エドワード・T・ホールが提唱したものです。コンテクストとは「文脈・脈絡・
背景」という意味ですが、ハイ・コンテクスト文化とは「言葉が少なくても、
あえて言わなくても、相手が理解できる共通概念がある文化」のことです。空
気を読んだり?察することが求められる文化であると言えます。

 「言わなくてもわかるだろう」に代表されるハイ・コンテクスト文化は、確
かに根強いものがあります。しかし、最近の動きを見ていると、一部の狭い範
囲でよりハイ・コンテクスト化が進む一方で、逆に今まで共有されていたこと
が通じなくなっている場面も増えています。前者は、ネットの掲示板のような
世界で顕著だと言えますし、後者は、変化のスピードが急激なため、世代間の
経験知の差が拡大していることがあります。

 いずれにしても、ハイ・コンテクストには良い面と悪い面の両面があります。
グローバル化が進む中で、組織文化・風土をどう醸成するかは、人材開発の大
きなテーマです。組織文化・風土を考える上で、ハイ・コンテクストの良さを
強化する方法もあれば、逆にロー・コンテクスト化を進める方法もあります。
リーダーに求めるものがハイ・コンテクストなのか、ロー・コンテクストなの
か、それだけでも人材開発の進め方も大きく変わります。

 結果的にハイもローも混在している組織、コンテクストに注意を払わない組
織では、今後益々、ミスコミュニケーション、ディスコミュニケーションが発
生する可能性が高いと言えます。皆さんの周囲では「空気を読む」ことはポジ
ティブな意味ですか?ネガティブな意味ですか?

             (2013/02/25 人材開発メールニュース第717号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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