Back Number

引く合意から足す・掛ける合意へ
 最近、若手を対象とした研修、特にグループワークで合意形成する場面にお
いて、以前(昔)と少し変わったと感じることがあります。

 一つは、時間の使い方です。以前はスタートもバラバラで時間管理も気にせ
ず、まとまりもなく意見が出されていました。結果、時間内に終わらず、まと
めも中途半端…というケースが多かった印象があります。一方最近は、スムー
ズに取り組み始め、メンバーが順番に意見を発表し、時間内にきっちり終わる
ことが多い感じです。

 もう一つは、時間と同じようなことですが合意形成の進め方です。最近は、
どちらかと言えば、「足す」のではなく、「引く」ことを中心とした進め方を
しているように見えます。「引く」と言うのは、最初に全員の意見を出し合う
ものの、少し全体と異なる意見があるとすぐに引っ込めてしまい、多数派の意
見に合わせる傾向が強い印象を受けます。「少数派の意見を大事にしよう」と
声をかけても、お互いに意見は交換しますが、少数派の意見が消えていくのを
待っているような雰囲気を感じることもあります。

 極端に言えば、合意形成にあたり、(無意識に)消去法を優先している感じ
で、採用する意見よりも採用しない意見を先に決めていることが数多く見受け
られます。当然?一度不採用になったものは、(不採用ということで合意を形
成したため)復活することはほとんどありません。
 勿論、全てがそうだと言うわけではありませんが、多くのグループが時間内
にスムーズに終了し、似たような発表になるのは、合意形成の進め方に一つ特
徴があるように思います。

 しかし、若手の研修場面に限らず、様々な合意形成の場面で、まとめること、
形を整えること、削ぎ落とすことが優先されているのかもしれません。価値観
が多様化する中で、合意形成が難しくなったと言われます。多様な意見を集約
するためには、整えることも必要ですが、組織的な合意形成においては、一人
では思いつかない新たな価値を創造・発掘することも必要です。

 人材開発の場面でも、まとめると小さくなるのではなく、まとめると大きく
なるようなことを意識的に体感させることも必要だと言えます。今まで以上に
意見を「足す」「掛ける」こと、その必要性・可能性を伝えていく必要がある
のではないでしょうか。


             (2012/10/08 人材開発メールニュース第698号掲載)
                          humanize:吉次 潤


Go to Back Number Index
Go to Top Page