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人材開発の体制は、固定的?流動的?
 企業における人材開発の考え方は様々ですが、人材開発を推進する体制とい
う視点で見ると、人材開発担当者(部門)を固定化する組織と流動化する組織
の二つがあります。固定化とは、担当者(メンバー)の異動が少なく、長期に
わたり同じメンバーが人材開発を担当する体制です。逆に流動化は、メンバー
の異動が多く、短期間かもしれませんが、様々なメンバーが人材開発に携わる
ことを意味しています。

 一般的に考えると、固定化した組織の方が、人材開発施策の一貫性や継続性
を確保しやすいと言えます。ただし、固定化できるのは、余裕のある大手企業
に多いと言えます(勿論、それだけではありませんが)。

 流動的な組織が悪いと言うわけではありませんが、たまにこれまで蓄積して
きたノウハウやナレッジが活かされず、勿体ないと感じることが多いのは、や
はり流動的な組織です。引継ぎそのものが行われていない場合は勿論ですが、
形式的な引継ぎだけで大切なものが抜けていることもあります。

 例えば、評判・評価が良かった研修を継続して実施しているにもかかわらず、
回数を重ねるごとに評判・評価が悪くなることがあります。一見、好事例・ノ
ウハウを引き継いでいるように思えますが、本当に引き継がなければいけない
のは研修と言うコンテンツではなく、どう課題が解決できたかというナレッジ
やノウハウだと言えます。何をやったかという情報は比較的残されているよう
ですが、実施された背景や環境、その成果(変化)については、あまり蓄積さ
れていないことが多いようです。

 こういう話題を挙げると、人材開発部門をエキスパート化・固定化した方が
良いと思われるかもしれませんが、実際には一長一短です。
 固定的な組織は、アン・ラーニングが起こりにくく、変化に対して、大胆に
迅速に方針を転換することや新しいことに取り組むことが苦手な傾向がありま
す。むしろ変化が激しい時代では、方針転換や新たな取り組みに着手できない
方が経営に対する悪影響は大きいかもしれません。

 人材開発に携わる方々は、時には自ら所属する人材開発部門・組織の特徴や
傾向(メリット・デメリット)を分析することも必要です。残念ながら、絶対
的な体制はありません。敢えて言えば、問題意識の高い組織はやはり強い組織
だと言えます。人材開発がどう効果的に展開できるかは、人材開発部門(担当
者)の問題意識の高さによるところが多いのではないでしょうか。


             (2012/07/09 人材開発メールニュース第686号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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