Back Number

キャリアカウンセリングの現場から…2011年夏(3)
 前回に引き続いて、某専門学校での一日キャリアカウンセラーで出会った学
生の話をしよう。

 今度の学生は26歳、高校卒業から2年制の専門学校に昨年入学するまでブラ
ンクが6年ある。この学生は前回の学生と異なりきちんと話ができる。ブラン
クの間は、大学等学校に行っていたのではなく趣味のピアノで高級レストラン
での伴奏(バックグランド)のアルバイトと某音楽教室の契約社員(直近1年)
をしていたという。

 アルバイトは、当時ピアノの恩師からの紹介、仕事は午後から、時には好き
な曲を、時にはリクエストに応じて、と比較的自由気まま、趣味と実益を兼ね
て…と、とても就職する気にはならなかったという。
 ところが、そのレストランが経営破綻、次に紹介で行った音楽教室もピアノ
を教授するという条件が、いつしか周辺へのポスティング、教室生の募集営業
での戸別訪問…条件との乖離に嫌気をさしての退職。ここでも好きなピアノを
使ってと思えば、アルバイトでも同じような仕事を選ぶだろうに、なぜかコン
ピュータ系の専門学校へ。そして、適性検査でIT系の素養が低いと診断され、
小売流通系での就職を希望して私の前に。
 なぜ、小売流通系と問えば、ピアノ伴奏の時お客さんと会話を多くしてコミ
ュニケーションに自信があるとのこと。考えないところと、考えるべきところ
がゴチャマゼ、脈略のなさに唖然とする。

 本人が気にするのは「26歳」という年齢が、年齢制限に引っかかり応募先が
少ないという一点に集中する。本当は、それ以上に乗り越えなければならない
バーがあるのに、である。

 何の気なしに、ピアノ的な高級感やセンス、年齢制限が緩そうな高級ダイニ
ング・チェーンやレストランチェーン、ウエイテイングバーなどにピアノが置
いてある隠れ家的なレストランのことを話すと俄然、興味をもってメモを取り
始める。外食系の専門サイトも紹介する。

 そして、何と言っても、今から考えれば回り道かもしれない8年間の時間を
いかに『強み』『売り』に変えるかが勝負所であり、それを確認し合う。
 パッと目の前に光が射したのか、当初と明らかに違う表情になる「ちょっと
は役に立ったかな?」。前述の29歳の学生には約1時間、こちらが翻弄?され
て何ら暫定的な処方箋すら提示できないままに終わってしまった。学生の表情
を見て、こちらが報われた気がした。

 しかし、この学生の前に立ちはだかる壁も高く厚い。しかし、本人は働く気
満々である。その気持ちでぶつかっていって欲しい。


             (2011/08/22 人材開発メールニュース第642号掲載)


Go to Back Number Index
Go to Top Page