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キャリアカウンセリングの現場から…2011年夏(2)
 最近始めた某専門学校での“キャリアカウンセラーなお仕事”に弾みがつい
たわけではないが、別の専門学校からも臨時的に一日来てくれと言われて、7
月末に5時間、5人ほどの学生と面談してきた。

 その中で、1人の学生を紹介したい。29歳(専門学校生です)、独身(当た
り前か)、都内の有名私立大学理工学部卒、そして公立大学大学院電子研究科
(25歳)卒、学歴はすばらしい。そして大学院卒業後、フリーターを経て3年
制の専門学校電子工学コース3年生である。
 どんな学生か事前に知らされていなかったこともあり、放り投げるように本
人から渡された履歴書と、いやに老けた顔とを照らしてただただ狼狽えるだけ
であった。不可思議な経歴に興味半分、心配半分で質問を繰り出すが、きちん
と回答できない、いや、ほとんどだんまり(考え込むでもなく、言葉を選ぶで
もなく、じっとこちらを見て)、話せないのである。言葉が出てこない。表情
は一つと変わらず、笑顔も出ない。沈黙の時間だけが重く流れていく。

 結局、何ら有効な会話もできずに時間切れ、それでもぎくしゃくとした会話
の中で自己PR作成の糸口だけはアドバイスして場から解放された。

 しかし、何で(人の人生にはさまざまな理由があり、多くの人が歩む道だけ
が当たり前ではないので、それに固執するつもりは毛頭ないが)こんな難解・
複雑な進路を辿るのかが不思議でしょうがない。大卒時点、大学院卒時点でも
十分な状態であり(就活も現在ほど厳しくはなかった)、ある意味、人もうら
やむような大学であり、大学院であり理工系である。それも売れ筋の電子系…
むむむ…が尽きない。加えて、なぜそこから専門学校に来るの?その答えを学
生がきちんと説明してくれない(説明できない)から余計もイライラ、モンモ
ンが募る。そして、これから彼はどこに向かうのか。

 出口の見えないミステリアス(?)な学生との一時間と、その日の蒸し暑さ
で、なかなか寝付けない夜を過ごすことになってしまったのは言うまでもない。


             (2011/08/01 人材開発メールニュース第640号掲載)


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