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就職指導の現場から・2011年冬
 学生話題で続けさせていただく。最近は自己PRを聞いていても本当につまら
なくバリエーションに乏しいことに気が付く。

 資格取得−それも検定レベルでの「目標に向かって頑張る」のオンパレード、
目標と言っても過去問で予想できる範囲で、70点取れば合格が目標になる。加
えて、「挫折してもあきらめず目標と…」となると、その検定、それも3級レ
ベルで落ちて、再挑戦、となる。しかし、「私は国家資格を取得」と聞いて、
オオッと思うとファイナンシャルプランニング技能士3級を堂々と述べる。確
かに、確かに、だが、世の中との常識とはズレを感じる。そして「その資格で
銀行で働く」と言う。大学の専門学校化の弊害か、肝心の専門科目の説明すら
できない。ちなみに、今の学生たちは「目標」とか「ゴール」というと、資格
取得やTOEICスコア、レポートの納期など明確なもの、それ以外は「友だちを
増やす」「来客数をアップする」など数字が伴わない曖昧なものが多い、答え
が出にくいものには取り組まない。ゆとり世代の特徴か。

 「積極的に行動」「新しいことにチャレンジ」も多いパターンだが、定期的
に大学に通っていると、その学内で学校主体によりさまざまなイベントや講座
が開かれている。大半の学生はその範囲内での活動に終始する。もちろん、何
も参加しない学生も多くいるので、参加しただけでも積極的といえなくもない
が、リスクもなく学校が用意する箱の中の活動で、積極的といわれても何も心
が動かない。まして、話す内容は参加者であればほとんど同じ、これまた、う
んざりネタになってしまう。

 そして驚くことに、アルバイトもサークル・部活、学内活動も何もやってい
ない、「帰宅部」というのか「引きこもり(ゲームばかり)」が結構多い。こ
の場合、話題を見つけるための押し問答だけで模擬面接の時間は終わってしま
う。いつも思う「毎日、何やっているの?」しなくてもいい心配をこちらがし
てしまう。

 それで就職はしたいという。就職するのは自由だし、頑張って欲しいが企業
側が納得しないし受け入れてもらえないだろうが、本人はそれがおかしいとは
思っていないようで、常識に縛られた私の頭が大混乱に陥る。「間違っている
のは私かもしれない…」と。

 時代は就職超氷河期。マスコミ報道などで学生の苦戦ぶりが伝えられるが、
落ちるには落ちるなりの理由、採用しないなら採用しない理由が確実にある。
 その視点が欠落している議論はやはり空しいといえる。


             (2011/02/21 人材開発メールニュース第618号掲載)


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