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2012年卒・就職戦線スタート(2)
 前回に引き続いて、就活指導・支援の話をさせてもらいたい。
 10月に発表された日本経済新聞の2011年採用状況調査によると、来春卒の内
定者数は今春比較で6.1%減、製造業は2.9%増と2年ぶりのプラスだが、非製
造業は2年連続の2ケタ減である。

 学生に人気のある保険28.2%減、銀行10.8%減、人手不足感が常態化してい
たスーパーなども28.5%減と、多くの学生にとって厳しい数字が並んでいる。
8割の企業が来春も「今春並み」であるから、多くは期待できない。そのうえ、
これからの円高などの状況を考えれば、厳しさは増す可能性がある。

 卒業延期制度、卒業から三年間は新卒扱いといった新卒ブランドにすがる対
応や、新卒者や卒業後三年以内の既卒者を試験採用する企業に助成金を支給す
る若年者雇用対策の強化などもあるが、所詮、緊急避難的、その場しのぎの対
策に過ぎず、採用拡大には大きくつながってはいかない。

 一部大手商社では、就職試験を4月頃から8月頃に4ヶ月遅らせることが検討
されている。人気の高い商社が採用活動を遅らせれば、産業界全体に早期採用
を見直す機運が広がる可能性があるという理由だ。

 経団連も「企業の倫理憲章」に則っての採用活動を呼びかけているが、その
経団連の有力企業が合同説明会で接触した電子系の学生に、10月下旬には会社
訪問に誘った例を私は知っている。そんなものだ。

 しかし、考えてみれば、全国に会社は約419万社、所謂、上場を含む大手企
業は1万2000社0.3%である。そして就職人気企業ランキング上位300社は全体
に占める割合0.007%、全国約40万人の中で、本当に一握りの学生しか入れな
い世界であり、大半の学生には縁のない話である。商社が4ヶ月遅らせること
に何の影響を受けようか。私が普段接している学生の99%にとっても関係ない
世界である。本当はこんなことは言いたくないし、機会均等、公正公明とはい
っているが、実際のバーははるかに高い。

 経団連や商社団体、そしてそうした記事を取り上げる大手マスコミも、すべ
て偏差値上位校、有名校出身の人たちの内輪の話、議論でしかない。
 とはいいながらも、現実問題として学生たちはこの厳しい戦いに挑んでいか
なければならない。昨今の学生は打たれ弱い、2−3社落ちるとすぐにあきらめ
て就活を放棄する学生も多い。

 教示し、教導し、支援し、叱咤激励し、ほめて、認めて、時には叱責し、厳
しく突き放し…あの手この手の奮戦がまた今年も始まった。


             (2010/11/15 人材開発メールニュース第605号掲載)


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