Back Number

禁煙との戦い(1)
 ご存じの通り、10月1日から煙草代が値上がりになった。
 300円のものが100円近くのアップ、これを庶民泣かせの増税というか、健康
増進のための喫煙抑制策というかは論が分かれるところだが、いずれにしても
喫煙家には痛い出費といえる。

 10月1日を挟んで、禁煙協奏曲がマスコミで多数流され、小売りの店頭では、
煙草のまとめ買いを煽る一方、禁煙グッズの販売コーナーを設けるなど、売れ
れば何でもいいの節操なしの状態になっている。

 それにしても、禁煙グッズは百花繚乱、まあ、すごい!の一言。禁煙ガムに、
キャンディ・飴なんて可愛いもので、もちろん、体に貼るパッチ類も存在感を
示し、中には「肺皿」と称した肺の形をした灰皿で、吸い終わった煙草を消す
ために灰皿に押しつける度に、肺が黒くなることを疑似体験?できるものもあ
る。こうなると、悪趣味を通り越して拷問に近い。そして、極めつけは電子タ
バコ。吸った気分を味わえる。充電式で72時間使用できるものもある。お値段
は、たまたまネットで見ていたら、12,000円から19,000円する。それでも禁煙
できれば、長い目で見て割安か。

 加えて、禁煙外来なるお医者さんの助けを借りて「ニコチン依存症」治療を
受けるもの。さまざまな制約はあるにせよ、保険適用が受けられる。アルコー
ル依存症や薬物依存があるように、ニコチン依存もれっきとした病気に認定さ
れて、時代も変わったと思う。

 ところで、「生佐藤」をご存じの方はわかるが、私も二年前までは立派なニ
コチン依存症で、ヘビースモーカーに入る部類に属していた人間である。但し、
一念発起ではないが、「初めての禁煙チャレンとジで、禁煙成功」を果たした。

 禁煙のきっかけは、家族の有言無言のプレッシャーもさることながら、喫煙
環境の劣悪化が大きい。分煙法の浸透もあり、飛行機で禁煙が始まり、列車・
新幹線(特にJR東日本管内)でも、次第に喫煙家は追い込まれていく。そして
オフィスでの喫煙環境、三年ほど前であったのが27階という高層階にある企業
の会議室で研修を担当した際は、受講生ともども休憩になると、1階の喫煙所
までエレベーターで昇降を繰り返す。製造業の大きな工場での研修では、敷地
内に喫煙所がなく貸与されたICカードをかざしながら数カ所のドアを突破、
敷地外の公園に吸いに出たこともあった。寒風吹き荒れる中、ビルとビルの間
の狭い通路を抜け、野天の喫煙所で吐く息の白さと白いタバコの煙の区別がつ
かないような場にも遭遇した。情けない日々であった。

 そんなことを繰り返しているうちに、ふと「私は何をしているのだろうか」
とタバコ人生のむなしさ・辛さ、世間からの冷たい仕打ち、私に逆境を与えて
いる、全の宗教や八百万の神々、仏様、そして道端のお地蔵様まで恨んだ日々
であった。
 そして、私は不退転の決意で、禁煙を密かに心の中で誓うのであった。


             (2010/10/04 人材開発メールニュース第599号掲載)


Go to Back Number Index
Go to Top Page