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閉塞感が続く2010年夏
 戸籍上は、江戸時代生まれの149歳の女性が東大阪市に生きている…そんな
ことまで飛び出してきて全国に燎原の火のごとく広がっている。
 高齢者の所在不明問題、酷暑・猛暑の余波を受けて高齢者の熱中症死が多発
したこの夏、「長生きはしたけれど…」長寿国日本の実態がさらけ出された今
年の夏であった(ちなみに、長崎県壱岐には文化7年生まれ200歳、我が地元相
模原市には安政5年生まれ152歳が戸籍存在した)。そして、度重なる幼児虐待、
育児放棄。「生まれてきたけれど…」と生まれてきたことすら、辛くなる報道
が相次いだ夏。

 大学生の就職が決まらない。10万人を超える無業者・卒業延期者を輩出し、
さらに失業すれば一年以上失業が続く現状。「育ってはみたものの…」「大学
に入ったものの…」「卒業はしたけれど…」、生まれてくること、育つこと、
そして長生きすることすら、本当に厳しく大変なことになってしまったこの国、
すべてを政治のせいにするつもりはないが、あまりにもこの国はこの10-15年、
失ったものが大きかったような気がしてならない。

 その長く、そして日本全国を覆うような閉塞感を振り払うべく多くの国民が
決断・選択した「政権交代」、それが幻想であったことはこの一年間の新政権
党のだらしなさ、人材のなさが露呈してしまった。
 現政権のトップのみならず、ここ3-4代の総理大臣は「何をしたいか」では
なく、「総理大臣がしたい」「総理大臣の席に座っていたい」がためにその席
に就いているだけしかみえないのは私だけであろうか。
 目的が手段化し、我欲・自己防衛だけが一人歩きする。この国の財政、将来
を憂い、本当に「消費税アップ」が必要ならどのような嵐・逆風にあっても、
四面楚歌に陥っても毅然・決然と言い続ければいいのに、選挙に負けるとすぐ
に引っ込める。ならば最初から、言わなければいい。

 哲学者ショーペンハウアーは、「あることが真実だと受け入れられるには、
3つの過程が必要だ。1.バカにされる、2.猛烈に反対される、3.当然のことと
して受け入れられる。本当に挑戦しようとするならば、反対は予想の範囲であ
ろうし、覚悟しているはずだ。信念のもとに発言しているのではないのか。最
小不幸社会の実現、奇兵隊内閣…あのときの言葉はどこにいったのか。すべて
空しい絵空事、言葉遊びでは総理大臣の資質さえ疑われる。現総理、前総理、
前々総理、その前…皆、同じである。

 進む円高、株安。そして政治・政策無策。誰(どこ)がやっても同じ。我が
日本の閉塞感は、これからも続くようである。そして無力感すら漂う。


             (2010/09/06 人材開発メールニュース第595号掲載)


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