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就職指導の現場から・2010年夏
 7月下旬から8月初旬にかけて、3つの大学で「夏休み前緊急就活ガイダンス」
的な場面で話をしてきた。

 いずれの大学も10月・後学期から本格的な進路ガイダンスが始まる(多くの
大学では3年生の春からガイダンスが開始されるが、授業時間の確保などの関
係で春からは難しいところも多い)。
 しかし、昨今の就活の状況−厳選傾向に対応した意識喚起を早めに−という
こともあるが、インターンシップ、オープンセミナーから社員交流会といった
企業との早期接触、ペーパー・ネット、テストセンター式など形態も内容も多
様化する適性検査対策、そして、10月−11月に集中する検定や国家試験のピー
クに合わせた準備など、3年生の夏休みが非常に重要な時期であることを学生
に知ってもらい、「就活を意識した夏休み」を送ってもらうための意識付けの
緊急ガイダンスというわけである。一人でも多くの学生に気づきを与え、有意
義な夏休みを送ってもらいたいという想いが強い。

 今の学生たちの就職・就活はまさに「内憂外患」である。
 新興国の市場開拓、業績向上に伴い、自動車を含め製造業大手企業の採用意
欲は回復傾向にあり、新卒採用の減退感は下げ止まったように映る(新卒求人
倍率でも5,000人以上企業で顕著に数字に表れている)。しかし、「自己分析」
「業界・業種・職種研究」「適性検査やエントリーシート対策」などさまざま
な就活場面での“不足・不備”が重なっているうえ、地元志向の強さなども加
味されて、学生全体を見ると超厳選採用の壁を突破できない。学生間格差・二
極分化は更に拡大し、早々と就活戦線を「離脱」し、卒業延期制度に「逃避」
する学生が続出する。自ら、及び学生の置かれている状態など内なる要因『内
憂』の根強さに加え、『外患』が今、ジワジワと新卒の働く場を奪いつつある。

 日本の大手企業を中心にとして、日本人中心の新卒採用から国籍や国境の壁
を超えた採用が広がっている。一気に開国に至る地殻変動である。
 その背景にあるのは、グローバル化の波である。国内市場の成熟・飽和感も
あり、企業の海外売上比率が拡張し「日本以外で稼ぐ(さらに、北米・欧州以
外で稼ぐ)」企業経営になってきたことが大きい。パナソニック、三菱重工、
IHI、富士通、東芝など製造業大手が外国人採用枠を日本人枠より多く設定し
始めた。また、ユニクロ、ローソン、楽天も外国人採用を本格化させる。結果、
日本人の新卒採用枠は減少する。

 背景には、グローバル経営の推進、海外市場の開拓という要因とともに、語
学力や海外生活経験そして、外国人の知的基礎能力(特に、理数系)の高さ、
地位や収入へのどん欲さ、闘争・競争心やハングリー精神の差向上・向学心の
高さなども大きな要素(意欲と能力の高い人材としての評価)であろう。
 草食系に代表される日本人学生にはない魅力である。


             (2010/08/23 人材開発メールニュース第593号掲載)


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