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卒業延期制度について
 大学生の就活・就職が厳しいのは、今更、言うことでもないが、4月に2校ほ
ど関係する大学に行ったついでに、指導した学生に会ってきた。

 私の取材に付き合ってくれるくらいだから、就活は順調かと思ったが、20人
ばかりの学生は一様に皆、厳しさを訴えていた。中には、「佐藤先生の話、本
当だったのですね」という台詞、口でいくら厳しさを言っても、やはり現実と
の乖離を感じざるを得ない。それでも、皆、前向きに取り組んでいることがう
かがえ(たまたまだが、楽天的な学生が多い)、ホッとした。

 ところで、今、大学に広がっているのが「卒業延期制度」だ。卒業資格を既
に有している大学4年生が、就活のために大学に残る制度で、一部の報道によ
ると、青山学院大学、中央大学、東京工芸大学、周南工科大学などが実施して
いるという。卒業しても就職浪人になると「無業者」、就活は中途と一緒、も
しくは、第二新卒的な扱いになり不利になるという理由からの卒業延期で、新
卒という“ブランド”を確保することになる。その代償は、履修費2−3万円と
授業料の半額という金銭的なものだけでないだろう。

 私なら、半年なり一年先送りする学生の面接は格段に厳しくする。過去のこ
とを言っても詮無いが、やはり3−4年生時期の就活への姿勢が気になる。そこ
に納得できる理由が出てこなければ、厳しい現実から逃げたと言わざるを得な
い。所詮、緊急避難、問題の先送りでしかない。こうした制度を設ける大学も
大学だ。本来、4年で卒業、就職させるのが大学の責任、役割ではないのか。
それが、彼らの「教育」なのか。

 昨今、もう一つ、気になることがある。それは就活指導の前倒しである。企
業が早いから「学生も早め早め」の行動を…。その意味合いはわかるが、それ
では企業の早期採用活動を批判してきたこれまでの姿勢が問われる。また、実
際に今年の大企業の姿勢を見ていると、採用選考そのものの時期は以前より随
分と遅くなっている。大企業が遅そくなれば、その分、一部のベンチャー企業
を除いて中堅・中小企業と時期がずれる。その実体に大学も気づくべきだ。
 煽られ、就職できずにさらに5年生をやらされる学生が可哀相だ。


             (2010/05/10 人材開発メールニュース第579号掲載)


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