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就職指導の現場から・2010年春
 また、新たな年度を迎えた。フレッシュマンたちが風を起こす季節だ。
 多くの企業で入社式から始まる新入生受け入れが始まったことだろう。ご存
じのとおり、リーマンショックの影響で急激にブレーキがかかった新卒採用の
抑制が止まらない。景気の先行き不透明感、政治のモタモタ感(しかし、現首
相のトロトロ感は何とかならないか。国民は民主党政権は願っても、お小遣い
生活のノーテンキ首相を願った訳ではない)の中、企業側が採用増に慎重な姿
勢を崩してはいない。

 結果は、見るも無惨な2月1日現在の内定率80%(厚生労働省調査)である。
応募先がない、説明会の予約が取れない。学生の話だと、2-3月は受付開始1分、
定員オーバーで締め切られる会社説明会が続出していたそうだ。PCと携帯電話
両方を同時に操作しながら、予約をするテクニックが身に付いたと自慢する学
生もいた。

 加えて、選考での最初の関門、エントリーシート、Webテストを通過できな
い学生が続出、そんな状態だからかもしれないが、由々しき現象としてWebテ
ストの代理受検、本人なりすまし受検が問題化しているという。ネットでの受
検は、誰が受けたかわからないからズルもしやすい。しかし、考えてみてわか
ると思うが、たとえWebテストが無事通過したとしても、エントリーシート、
面接選考とハードルは高い。地頭の良さや知的基礎能力の不足感はやがて露呈
していくだろう。また、Webテストのレベルに見合う人が入社して活躍できる
訳だから、万が一、幸運にも入社できたとしても、その企業の中で仕事を遂行
していくことは無理かもしれない。

 しかし、報道番組を見れば、落ちまくっている学生の特集は花盛り「100社
エントリーした」「50社応募した、受験した」という話は頻繁に出てくるが、
その学生がどのような自己分析をし、自分をアピールしているのかを伝える報
道はない。どのように広く深く業界・職種・会社研究をして説得力ある志望動
機を用意して臨んでいるのかもわからない。また、応募先もわからない。学生
側の一方的かつ表面的な活動しか伝わってこないし、お涙頂戴式の報道でしか
ない。

 就職・採用はマッチングであり選考のプロセスが必ずある。それが一切分か
らないでは何も判断できない。そもそも、そうしたものがしっかりと出来てい
れば、どんな状況でも内定は取れているはずである(この厳しい中でも複数内
定組は続出している)。

 いずれにしても、来年の4月、どこに自分がいるのか、どのような会社で入
社式を迎えているのか、正念場の4月でもある。


             (2010/04/05 人材開発メールニュース第575号掲載)


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