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3万人を超える自殺者が出る国
 何の因果か、正月早々から自殺とフィギアのダブル攻撃に悩まされてきたが、
あまり良い話題ではないが「自殺」続きで話題を展開したい。

 先頃、警視庁がまとめた昨年1年間の自殺者数は32,753人で昨年よりも500人
あまり増加したという。自殺者が3万人を超えるのは98年以来12年連続とのこ
とで、何となく時代の暗さと符合するのが怖い。

 ちなみに、WHOによる世界の自殺率順リスト(06年)によれば、日本は誇れ
たものではないが上位8位に入り(1位リトアニア、2位ベラルーシ、3位ロシア、
韓国は11位、中国25位、アメリカ41位)、やはり自殺の多い国であることはつら
い現実である。折しも、同数字が発表された前後で、元アイドルタレントの母
親が飛び降り自殺したかもしれないという報道がなされており、より身近なも
のに感じてしまった。

 それ以上に、非常に残念なことであるが、昨年は私の知っている人も2名自
殺しており、報道以上に自殺が身近に感じてしまう。共に仕事関係で知り合っ
た人で、一人は過去に仕事を一緒にした方、もう一人は死の3ヶ月前にご一緒
した人で、特に後者の方の事実を知ったときは愕然として立ち尽くしてしまっ
た。

 その方は大学関係の方で、丁度、7月に学校に仕事に行った際、学生のこと
で言葉を交わし、昼食時に一緒にコンビニ弁当を食べた。普段からの明るく穏
和な態度はその時も変わらず、夏祭りや夏の過ごし方について談笑したものだ
った。そしてその3ヶ月後、10月にその学校に行った際、その方がいない。異
動でもされたと思って他の職員に聞くと「実は…」となった。8月初旬に自ら
命を絶たれたという。学校内では生徒の動揺もあるので急死となっているよう
だが、周囲の人たちは死に至る原因は皆目見当がつかないという。

 今も思い出す、穏和な語り口と優しい笑顔、朴訥とした中にも、学生への心
からの愛情と仕事への真摯な取り組み姿勢…その笑顔の背後、心の奥にあった
“見えなかった闇”は一体何であったのであろうか。

 正月早々に私を悩ましている自己PRの中身を見ていて、「君は未だ大丈夫だ、
死んでいないんだから。」という言葉が喉の際まで出かかっては止まる。たぶ
ん、自殺にはさまざまな理由が絡まっていることだと思う。
 しかし、3万人を超える自殺者が出るこの国は、やはり悲しい国ではないだ
ろうか。3万人の悲しさもあるが、自殺した理由もわからず、自殺を防ぐこと
もできなかった家族や周囲の人たちの、その数倍の悲しさ、哀しさ、むなしさ
が漂う。暗い話で恐縮です。でも書かずにはいられないことであった。


             (2010/02/22 人材開発メールニュース第569号掲載)


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