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作文について・小学生編
 皆さん、明けましておめでとうこざいます。
 本年も人材開発ネット★情報BOX並びに当コラム「佐藤孝夫の人材開発の
現場から」にご愛顧賜りますようお願い申し上げます。

 今年もせこく重箱の隅を突くような視点と些末な話題を針小棒大に語ってい
く毎々のスタイルを踏襲して参ります。ご容赦ください。

 新年早々の話題は「作文」についてです。いささか旧聞になりますが、「心
の輪を広げる体験作文」の小学生部門で、総理大臣賞に選ばれた熊本県の小学
四年生・藤崎未夏さんの作文「気持ちを伝えたい」をご存じだろうか。随分と
話題になったし、多くの新聞で全文掲載されたようなので読まれた方も多いと
思う。

 藤崎さんは、生まれつき左足がなく義足をつけて生活しているのだが、その
ことを知らない一年生が入ってきて、何人かが「にせ物の足だ」と言ったのを
受けて、義足のことを勇気を持って話すまでと話した時の一年生の反応を綴っ
た作文である。私は全文を読んだ時、義足でも前向きに生きている姿や、自分
の状態を一年生に隠さずに伝える勇気そのものにも感動したが、その文章のう
まさ、テクニックを超えた素直で具体的、何の脚色・飾りもないが、だからこ
そ藤崎さんの思い悩む姿とその藤崎さんの話を聞いて「すごい」と目を輝かせ
る一年生たち、光景が目に浮かんでくるし、見てもいない子供たちの声が聞こ
えてくるようで、具体的だが想像力がふくらんでくる、その文章に感動した。

 話はいきなり情けない話に転じるのだが、昨年から毎々の大学生向け就活支
援で1,000枚を超えるだろうか、自己PR,志望動機、学生時代に打ち込んだ
ことをテーマとした文章に接してきた。その幾多の枚数の中で、「これだ!」
と思えたものは一枚もない。文章の中に盛り込まれるエピソード、話のネタの
大きさやインパクトを言っているのではなく、文章の中で繰り広げられる目標
達成までのプロセスや何かを成し遂げるまでの努力の中身がまったく伝わって
こない。積極的、行動的、好奇心旺盛、根気強い、忍耐強い、粘り強い…とい
った言葉は数多く出てくるのだが、その具体性がさっぱりわからないのだ。ま
してや「私は辛抱強い」と書くところを「私は幸棒強い」と書く輩もいて、読
む側の辛抱を試されているのかと考えてしまう。

 藤崎さんみたいに、素直にあるがままに書けばいいのにとつくづく思う新年
である。


             (2010/01/12 人材開発メールニュース第563号掲載)


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