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読書考「晴れた日は巨大仏を見に」
 「晴れた日は巨大仏を見に」−いきなり唐突な言葉で恐縮です。最近読んだ
面白本の一つで、日本各地に点在する巨大仏を見に行くルポルタージュのタイ
トルである。筆者は宮田珠己氏、幻冬舎文庫から出ている。

 牛久大仏、淡路島世界平和大観音、北海道大観音、加賀大観音、高崎白衣大
観音、長崎西海七つ釜聖観音、久留米救世慈母大観音、篠東南蔵院釈迦涅槃像、
会津慈母大観音像、東京湾観音、釜石大観音、親鸞聖人大立像、仙台大観音、
うさみ大観音、小豆島大観音と多数の大仏像が登場する。ご存じのものも多い
と思うが(私は実物を見たことがあるのは高崎、東京湾、仙台の3つである)、
奈良や鎌倉の大仏と違って、多くは知名度がないものばかり、中には宗教的と
いうよりテーマパークや温泉施設の一部であったり、個人所要であったりとな
かなかユニークである。
 筆者はこうした巨大仏を「唐突かつマヌケな風景−マヌ景」と称しながらも
真面目に取材を重ねる。なかなか興味深い本であり、一読をお勧めする。

 ところで私もつい最近、マヌ景に近いものに出くわした。私は過去17-8年間、
年に延べ2週間ばかり岐阜に仕事にいく。岐阜と言っても岐阜駅周辺と羽島駅
周辺の点での行動でしかないのだが…。今、岐阜の駅前は、岐阜北口駅前とし
て大きく広がったデッキが整備され、向かって左側には43階建ての高層マンシ
ョンが聳え、これが県庁所在地の駅かと思うような寂れた風情、景色が一変し
た。今回も約半年ぶりに岐阜に降り立つ。その日は前泊で夜で何も気がつかず
ホテルに入る。翌日、駅前のホテルのカーテンを開け「駅前がきれいになった
なあ」と思って眺めていたら、目の端に「うおぉぉぉ、なんじゃ、あれは…」
とギラギラ輝く奇異な物体を発見した。

 やや遠いが、もしやあれは…。私は着替えてその物体の元に早朝、走る。見
上げるとそこには!そうです。岐阜を象徴する織田信長の立像、それはギンギ
ラ、純金(メッキ?)に装飾されて、岐阜駅前に燦然と立っていたのである。
そのとき頭に浮かんだ言葉は、なぜか『マヌ景』−制作した人たちには申し訳
ないが、その言葉しか浮かばなかった。

 私は戦国武将の中で最も好き、尊敬する、本を読んだ人物は織田信長である。
そして、こうして岐阜に仕事に来ているのも織田信長のお導きだと信じている
織田フリークを自任するものだが、これは勘弁してほしい図でもある。何でこ
んな風にしかこの人を天下に示せないのだろうか?それが無性に悲しく、早朝
の岐阜駅前のその名も「信長ゆめ広場」に佇むのであった。

 「晴れた日はキンキラ(悪趣味)信長を見に」一見の価値有り、多くの方の
来岐阜を期待する(観光客増大につながるかな?)。


             (2009/11/23 人材開発メールニュース第557号掲載)


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