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最近の専門学校について−その2
 前回(第534号)の続きである。
 介護・福祉の世界を少しでも学べないかと思い、取り組んだテーマは「サー
ビス介助士2級」である。ご存じの方も多いと思うが、同資格はNPO法人日本ケ
アフィットサービス協会認定の民間資格であり、数多くある介護・福祉系の国
家資格とは違う。しかし、鉄道会社、デパート等の流通企業、ホテル、航空会
社などで、こぞって取得に乗り出している資格(知識と技能、マインド)であ
る。

 学ぶ内容は、サービス介助士の理念やホスピタリティ・マインド、主に高齢
者、障害者(身体・聴覚・視覚・知的)の身体的・精神的理解と介助方法など
で車いす使用者への介助方法も含まれる。その他、ユニバーサルデザイン、補
助犬、関連法規などの知識も学べる。準2級までは通信教育で取得できる。高
校生の取得も多いという。上位の2級になる(現時点で1級はない)と、通信教
育+課題提出+最終レポート、2日間の実技教習と検定試験受検・合格が取得
の条件になる。

 もちろん、私は実技講習に参加した。12-3人の参加者であったが、内6-7名
が1社(携帯電話販売会社)から派遣されてきた若い人たち、その他、小売流
通業、大学生がいた。携帯電話会社の一人から聞いたところでは、その会社で
は店長・マネージャーになる条件の一つがこの資格の取得だという。

 実技講習で最もインパクトのあったのが、高齢者疑似体験で、耳栓、白内障
ゴーグル、両肘・両膝サポーター、両足両手におもり、指が使いにくい手袋、
杖をついて町を歩き回り、切符を買い、エレベーターに乗り、買い物・食事を
するというもので、その不自由さにCMではないが「もたつく権利」と近い将来
の自分を想像して、うーむと唸ってしまった。

 また、車いす介助の実習は、まさにサービスやコミュニケーションの原点を
学んだ気がした。気配りももちろん大切だが、「相手(被介助者)主役」の本
質を垣間見たようなショックを受けた。「声かけ」により相手に確認しながら、
相手の自立を妨げずに…車いすの操作の難しさはもちろん、いかに自分が自分
勝手なコミュニケーションをしていたかを思い知らされた。

 私は、この講習を受けながら、こうした体験を子供の頃から、あるいは小・
中学校、高校、さらに大学・短大・専門学校でも教えるべきだと感じた。それ
も「介護」「ボランティア」といった、そのための勉強に特定することなく、
「相手のことを考えながら、相手主導で寄り添う・支援する」、ホスピタリテ
ィ、思いやり、「声かけ」によるコミュニケーション学習としての取り組みで
ある。こうした学びや気づきから、本当の「やさしさ」を学べるのではないだ
ろうか。そんなことを思った。

 ちなみに、サービス介助士2級取得者は、同協会ホームページによると2008
年10月現在で52,000人に達したという。資格取得を目的とせずとも、理念・概
念、技術などもっと広まってもらいたい。


             (2009/06/22 人材開発メールニュース第536号掲載)


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