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新入社員考−2009年・春
 毎年、日本生産性本部から発表される新入社員のタイプ、今年はご存じのよ
うに「エコバック型」。

 『環境問題(エコ)に関心が強く、節約志向(エコ)でムダを嫌う傾向があ
り、折り目正しい。小さくたためて便利だが、使うときは大きく広げる(育成)
必要がある。酷使すると長持ちしない(早期退職)が、意外に耐久性に優れた
面もあり、活用次第で有用となろう。早く消費を上向かせ、エコバックを活用
する機会を増やしたいものである』というのが、ネーミングの意味合いだとい
う。

 別の見方をすれば、今年の新入生は学生時代、就活スタート時やや陰りが出
てきたとはいえ、比較的就活は楽だろうといわれて活動に入った。ところが、
一転、リーマンショックが襲い津波のように世界同時不況、経済危機が押し寄
せる。内定を獲得した学生も内定取り消しに怯え、内定のない学生はそれでも
必死に食らいついて、もしかしたら大きな妥協の結果、今の業界・会社に入っ
てきたともいえる。

 エコバックは、手にしたときはチヤホヤされながら、すぐにクシャクシャに
丸めてカバンの中に押し込められ持ち主の意向でいかような形にもされる。生
もの、野菜、果物、牛乳など、中に入るものには決まりはなく、エコという名
で使い倒される…そんな状態だったのではないか。それもエコバックたる所以
か。温暖化現象の後にエコバックというのも、実に皮肉である。

 とはいっても、中には自宅待機という状態で、袋を広げてももらえず、使っ
てももらえない。エコバックの利点を証明することもできない。持ち主はエコ
バックで買い物をする余裕すらないのだ。そんなエコバックに、日が当たる時
はくるのだろうか。

 同じ日本生産性本部の09年新入社員意識調査で、「今の会社に一生勤める」
昨年に比べて大幅に増加、過去最高(55.2%)、「良心に反する手段でも指示
の通り仕事をする」過去最高の40.6%、哀しいかな、エコバックは時代の波に
翻弄されて、持ち主に忠実に役に立とうとしている。

 そして、「仕事を通じてかなえたい『夢』がある」は4年連続で増加、過去
最高71.6%、それは本当?かなと思ってしまう。それは入社した会社で実現で
きると思っているのだろうか。


             (2009/05/11 人材開発メールニュース第530号掲載)


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