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繰り返しの重要性?
 昨年、ある企業で年間3回、3ヶ月に一度のペースで勉強会を実施いたしま
した。実験と言っては、ちょっと失礼かもしれませんが、少し確認したいこと
があり、3回とも講義内容の半分は、全く同じ内容で実施しました。毎回同じ
メンバーが受講していたわけですが、内容が同じと言うことにどれぐらい気が
つくか知りたいというねらいがあり、研修中はメモを取ってはいけないという
ルールで実施してみました。

 講師側からすると、同じ人に同じ内容を話すのは、結構勇気が必要です(私
だけかもしれませんが…)。「絶えず新しい話題を入れなくては…」、「前回
と違った内容にしなくては…」と勝手に思い込む傾向があります。

 結果はどうだったかと言うと、予想通り?想像以上に?前回の話は、覚えて
いないと言う状況でした。勿論、私の講師として力量の問題も大きいと思いま
すが、教える(話す)側が思っている以上に教わる(聞く)側は覚えていない
ことを改めて実感することができました。実際は、2回目と3回目はかなり反
応が違いました。2回目は、同じ内容の部分についても初めて聞いたような雰
囲気でしたが、3回目は、途中からどこかで聞いたことがある…という雰囲気
が感じ取られました。併せて、毎回グループ討議を実施しましたが、1回目と
2回目の討議内容は似たような意見が多く出されましたが、3回目はかなり議
論が深まっていました。

 前述の通り、話す側が思うほど聞く側には伝わっていないことは、良くある
ことです。育成の場面で(育成に限ったことではありませんが)、確実に身に
つけていただくためには繰り返し行うことが大事だと言うことを改めて感じま
した。何を教育したかが大事ではなく、何が身についたかが大事なのは言うま
でもありません。

 様々な教育を行うことは勿論必要ですが、同じことを繰り返し行い、確実に
できるレベルに引き上げる視点は見落とされることもあります。また、同じ話
をするのは勇気が必要と言いましたが、それはただ単に教える側が、格好や体
裁を気にしているだけに過ぎないかもしれません。本当に必要なことは、何を
話すかではなく、教えたいことを確実に身につけていただくことです。そのた
めには、何度も何度も同じことを繰り返すことも一つの方法だと言えます。

 厳しい経営環境で、新たな研修は導入し難いことが多いかもしれませんが、
過去に実施した内容を再度社内でおさらいしてみることは有効な方法です。繰
り返し行うことで習熟度か高まりアウトプットが見えれば、また新たな試みも
できるのではないでしょうか。


             (2009/04/27 人材開発メールニュース第529号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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