Back Number

新入社員研修の現場から−2009年・春
 数少ない新入社員研修の仕事なので、それがすべての傾向とは言えないが、
例年いただいている某教育サービス業の新入社員研修後、新入社員と夜、一杯
やることになった。

 周囲のメンバーの話を聞いていると、やはり世相を反映してか、内定後の不
安心理についての話に話題の中心になっていく。大卒は12名であったが、そ
の中で同じ大学、アルバイト仲間、友達の友達…と言った関係で、内定取り消
しや自主的な内定辞退に追いやられた学生が身近にいるのが、なんと3人いた
のである。

 二人は東京の私大生、一人は東北地区の国立大学生だが、一人は示談金的な
ものをもらって4月初旬時点で次の就職先が決まったとのこと。もう一人は示
談金も貰えず(会社そのものが破綻したらしい)、就職先も決まらず、公務員
を目指して勉強するという。

 悲惨なのは、自主的な辞退に追いやられた学生(国立大学生・理工系)で、
4月から実家のある某県庁所在地の工場勤務との条件でナショナルブランドの
電機メーカー子会社の製造業から内定をもらったが、3月10日ころ文書が届
き、入社後、すぐに大阪勤務になるとのこと、本人は地元就職希望でその会社
の内定をもらったのだが、企業側は東北地区での仕事が激減、大阪での仕事は
なんと!セールスエンジニア、営業である。

 これには本人も唖然ボー然、すぐさま抗議をしたところ、返事は「大阪に勤
務できないなら、入社しなくても結構」と言われた。なんだ、それは内定を自
分から辞退するように追い込んでいるだけではないか。結局、その学生は入社
辞退に至り、未だ、次の就職先は決まっていない。

 地方とはいえ、国立大の理工系だから、贅沢を言わなければオンリーワン的
なメーカーにも入れそうだが、学生の地元志向がじゃまをしてか、就職活動は
停滞してしまったという。ショックもあったのだろうことは推察できる。

 これ以外にも、メンバーたちから聞く話は背筋が寒くなる様なものが多く、
需要激減の緊急時とはいえ、多くの企業が酷いことをやっていることもわかっ
た。今後、採用を大きく復活させるようなことがあったとしても、口コミによ
る評判(もちろん、悪い評判)はなかなか消えない。長い目で見れば、企業と
してやってはいけないことをやってしまったともいえる。

 こうして、早々と切り上げるはずだった、新人たちとの飲み会は一部、カウ
ンセリングの様相を呈しながら深夜まで及んでしまった。お陰で、次の日は久
々の二日酔い、痛い頭を抱えて二日目に突入したのはいうまでもない。


             (2009/04/20 人材開発メールニュース第528号掲載)


Go to Back Number Index
Go to Top Page