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不安な時代の新入社員
 この4月は、これまでのどの年よりも多くの人が不安を抱えて迎えたのでは
ないだろうか。折しも、世界的金融不安、需要減退、雇用危機、「100年に一
度…」「未曾有の・・・」と最大級の危機的表現で表される、まったく予測不
能の4月、新年度の始まりである。

 とりわけ、4月1日の入社を迎える新入社員たちはギリギリまで不安だったの
ではないだろうか。本来なら多少の不安はあるとはいえ、晴れて社会人の仲間
入り、希望に充ち満ちて迎える日にも関わらず、何故かビクビクものだったこ
とは予想できる。「会社や仕事をうまくやっていけるだろうか」という不安で
はなく、「無事、入社できるか」「会社や仕事はあるか」といった不安だから、
かえって辛い。12月から内定取り消しがブームのように連鎖した。日本綜合地
所の53人取り消しは序の口、富士ハウス(浜松市)129人、ラディアホールデ
ィングス(旧グッドウィル・グループ)61人といった大量の内定取り消しも含
めて、2月末時点で高校生260人超、大学生で1500人を超える。内々に処理され
たものも含めれば相当数あるだろう。

 そんな中、工作機械メーカーの不二越が、新卒73人全員を4月から6ヶ月間、
自宅待機させるという記事に出くわす。受注急減によって仕事がなくなり要員
計画の見直しとのことで、初任給の6割が保証されるという。

 今、新卒は採ったものの…的に、内定取り消しや自宅待機までいかなくとも
「育児放棄」とでもいうのか、昨年までとは新卒への導入研修を大幅に縮小す
る企業が増えたという。経費削減もあって、日程の大幅短縮、外部講師利用が
社内講師・インストラクター(専門的訓練も受けずに担当も多い)、外部会場
利用が社内会議室、ホテルが公共機関の会議室、宿泊を伴った研修が通いの研
修…現有社員の雇用だって危ない状況で新入社員だけ特別にはできないという
ことはよくわかるが、手のひらを返したような処遇は、まさに「米百俵の精神」
もかき消えてしまった。

 先の不二越、自宅待機で6割給料払うなら、鉄は熱いうちに打て!とばかり
にじっくりと新卒を育てるチャンスととらえ、ベテラン社員の指導の下、これ
までにできなかった教育をする機会ととらえられなかったのか、あるいはトラ
イ・アンド・エラー、新卒に思いっきり自由に物づくりをさせて失敗させてみ
てもいいのではないか。「ピンチはチャンス」なんて平板、陳腐な表現で申し
訳ないが、まさに、その言葉通りのことが目の前に出現したともいえる。ただ
の自宅待機で6割の給料を払う…その方がよっぽどお金の無駄遣いだと思う
(部外者が実情もわからず勝手なことを言って申し訳ない)。

 不安との戦いの中での社会への旅立ち、入社時の厳しさはバブル崩壊後より
厳しい感じがする。
 そういう時代の新入生だから、たくましく育って欲しい。


             (2009/04/06 人材開発メールニュース第526号掲載)


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