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100年に一度の大変な時期に就活できる奇異な世代
 今年の就職支援、模擬面接関係の仕事も無事、終焉を迎えた。昨年同時期と
は採用・就職戦線の風景はまったく異なったものになってしまった。私は中部
地区での就職支援の仕事が多いのだが、毎度見上げる名古屋駅前の昨年までわ
が世の春を謳歌していた自動車会社の高層ビルも寒々とした“巨(虚)塔”に
見えるのは私だけだろうか。あの高層ビルから人々を見下げて仕事をしている
気持ちはどうなのだろうか。非正規社員の使い捨ても、あの高さからなら何も
感じないのかもしれない。

 ところで、今年の就職戦線、温暖化現象から一転、超氷河期に突入したと言
われているが、採用選考時の厳(減)選採用の大変さはもちろん、応募できる
企業数の少なさにも少々驚いている。昨年3月に実施した就活のための合宿で
は企業の採用選考(会社説明会参加を含む)のピークに当たり、学生は企業訪
問に忙殺されていた。結果、合宿参加希望者が極端に少なくなり、実施規模を
大きく縮小した記憶がある。ところが、今年は学生が「行くところがない」と
いう悲鳴が上がるほど、採用活動している企業数や採用選考スピードが様変わ
りしてしまった。後に残るのは、焦りの色ありありの学生の顔だけだ。

 また、昨年であれば一次、二次選考あたりは楽々通過していた企業でも、ほ
ぼ同じ水準の学生が通過できなくなり、言葉は悪いが、滑り止め、取りあえず
内定確保的存在の企業でも落ちてくる学生が目立つ。

 それでも、探せば採用意欲の高い企業や知る人ぞ知る的な優良企業などもあ
り応募先には困らないはずだが、地元の金融機関、大手製造業、電力やガス等
ライフライン企業など規模や知名度、安定的な企業に意識が傾いてしまい、応
募先をさらに狭める結果になってしまっている。不況になると公務員人気が高
まるのと一緒である。といって、「御社を志望した理由は安定しているからで
す」と学生に面接で言われて嬉しい会社があるわけないのに、模擬面接で堂々
と「安定」「地元」「地域貢献」のダメダメ志望動機の3点セットを言う学生
を見ていると、頭が痛くなる。

 特に、最近では安定よりも一段と「安心度」を意識した企業選びで、より一
層の保守化が感じるからなおさらで、このところのリストラ報道を見ればわか
るように、超大手企業でも金融機関でも安定は程遠いといえるから仮に入社で
きたとしても、入社後のギャップにショック死しないか心配になる。

 私は学生たちに「100年に一度の大変な時期に就活できる奇異な世代」が君
たちであり、他の世代には真似できない武勇伝が作れる時代に遭遇したことを
「チャンス」と思って戦え!と言ってきた。

 真剣に戦い抜き結果を出して欲しいと切に願うばかりだ。


             (2009/03/23 人材開発メールニュース第524号掲載)


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