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真のリスク(脅威)は?
 体験学習の定番もの?として「的あて」という実習があります。「的あて」
の詳細については、割愛させていただきますが、何名かのグループで、制限時
間内に指示書に基づいて、得点が隠された的を狙い撃ちして最高得点を獲得す
ることを目的として実施されます。
 アバウトな指示書を読みこなし、高得点を獲得するためには、できるだけ他
のグループの動向を読み、誰か(別のグループ)が的を狙って撃った後に、情
報を収集して、的を狙った方が得点を獲得しやすくなるような実習です(アバ
ウトな説明ですみません)。

 15年ぐらい前に、大手企業で「的あて」を実施している場面を見学させてい
ただいたことがありますが、そこでは、指示書をしっかり読まれたようで、制
限時間が迫るまで、どのグループも動かない硬直状態が続いていました。全て
のグループが、「他のグループが動いたらどうする」という話を真剣にしてい
たことが印象に残っています。最終的には、残り時間がわずかなところで一斉
に動き始めるような展開で、いくつかのグループは全ての弾を撃てずに終わっ
たと記憶しています。

 先日、久々に?ある中小企業で、「的あて」を実施したという話を伺いまし
た。その企業は、ベンチャー企業で、元気が良いと言われる会社です。そこで
は、グループ内での話し合いもそこそこにいきなり撃ち始めたという話でした。
教育担当者の方曰く「まったくうちの連中は、何も考えてないんだから…」と
笑って言われていました。

 前述の通り、「的あて」で高得点を獲得するためには、後で動いた方が確率
が高く、有利です。しかし、誰かが動き出さなければ情報が収集できないとい
う面もあります。最初に動くチームは、勇気が必要でリスクが生じるわけです
が、リスクをとらなければリターンが得られないのは言うまでもありません。

 丁度今、先行きが不透明で、様々な場面で動きが慎重になっていることが増
えています。慎重に進めることは大切なことですが、「的あて」の実習同様、
リスクを取って動かなければ、リターンが得られないと言えます。動くことに
もリスクはありますが、動かないことにもリスクがあります。そのベンチャー
企業での「的あて」の話を聞きながら、今の時代には、先に動くことも必要だ
と改めて感じました。

 最近、リスクは取れないと言う話題を聞くことが増えています。ただし、ど
ちらかと言えば、動く(始める)ことに関するリスクはしっかり分析されてい
るようですが、動かない(始めない)ことについてのリスクはあまり吟味され
ていない印象を受けます。そもそも何に対するリスク?と言う点もブレている
ようなところもあります。
 こういう環境だからこそ、もう一度、真のリスク(脅威)は何かということ
を、組織の中で共有することが必要ではないでしょうか。


             (2009/02/16 人材開発メールニュース第519号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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