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就職指導の現場から−2009年新春
 ご覧になった方もいらっしゃると思うが、昨年暮れ、12月31日にテレビ朝日
系列で17時半から放送されたニュース番組Jチャンネルでなんと私の顔がドア
ップで写されたのである。といっても、私が犯罪者として映されたのでもイン
タビューされたのでもなく、東海地区の大学で実施された模擬面接合宿の講師
として招かれ、私が模擬面接官をしている光景がカメラに収められ放映された
ということなのだが…。たまたま見た人数人から早速、反響があり、曰く「イ
ンパクトがありすぎ」「学生が可哀想」「普段の苦労がよくわかった」と意見・
感想をいただいた。

 そんなわけで、12月中旬から年明け早々と、大学生向けの模擬面接の地獄に
突入している。過去にはこの12月から3月にかけて、延べ1,000人近くの大学生
への模擬面接で、心身共にこちらが鍛えられてきた。しかし、この3-4年の就
活温暖化現象によって、一昨年当たりは延べ500人と大幅に減少し物足りなさ
感じていたが、急転直下、厳しい就活状況に追い込まれたからか、今年は正月
を挟んで、すでに延べ600人に実施しており、久々の1,000人超えになりそうで
ある。とともに、我慢と体力の限界に挑む戦いが始まる。

 このところ、ずっと思うことであるが、私が仕事に行っている学校の学生が
そうなのか、あるいは全体的な傾向なのかわからないが、面接での会話が本当
に成り立っていない気がしてならない。声が小さい、感情がこもっていない、
語彙がワンパターン、絶句したままフリーズしてしまう、不利になると黙り込
むといった対応だけでなく、問われたことだけに答えるのみで、双方向の会話
を図ろうとしない学生、問われたことを曲解して答える、問われたものと方向
違いの答えを返して、最後まですれ違って終わる学生、用意したものの範囲を
超えると途端にトーンダウンして言葉が出てこない学生、アガる、緊張するで
は説明できない次元の学生が多すぎる。

 一番気になるのは、そうした学生に限って、自分が面接官との意思疎通をス
ムーズにできないことを気が付かないことである。もっと驚くのは、そうした
学生に限って自己PRで「私はコミュニケーションに自信があります」などと、
本気で宣う。

 時には、こちらの話が理解できないのは面接官(私のこと)が悪いとばかり
の顔をする輩も出現する。もちろん、こちらも完璧ではないし、混乱、聞き間
違い、勘違いもあるだろう、しかし、やはり言っていることがわからない学生
が多く、それを素直に口に出すと「圧迫だ」と言う学生も出てくるから厄介で
ある。

 そんなこんなで、戦いの場は常に混沌とした状況であり、イライラのしっぱ
なし、切れる直前、爆発寸前の一歩手前で寸止めの連続でもある。見ている側
からはスリルは感じるかもしれないが、当事者(本来の当事者は学生であるの
だろうが)は、真剣であるが故に、悲哀が漂う。こうして、今年も戦いの日は
暮れていく。


             (2009/01/26 人材開発メールニュース第516号掲載)


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