Back Number

経営と人事の距離間
 今年最後のワンポイント・アドバイスです。読者の皆さんにとって、どんな
1年だったでしょうか?

 米国の金融危機以降、実体経済も大きく揺らぎ、“ヒト”を取り巻く環境も
変貌しています。連日繰り返される、人員削減や内定取り消し等の報道を見て
いると、改めて何のために?誰のために?企業は存在しているのか?というこ
とを考えさせられます。個人的な意見ではありますが、改めて企業は「生き物」
ということを実感しています。環境変化に対応・適応する“生命力”が問われ
ているようにも思われます。

 また、ヒトの問題がクローズアップされる中で、改めて経営と人事の距離感
を考える機会が多かったように思われます。業績が悪く雇用調整を行う企業に
おいては、経営がイニシアチブを発揮し、人事が後片付け?に従事しているよ
うな印象を受けます。全部がそうだとは言えませんが、業績が悪い企業ほど、
経営と人事に距離感や上下関係を感じることが多かったように思われます。

 一方、私がお手伝いさせていただいている中堅・中小企業の中で、粘り強く
業績を上げている企業では、日頃から経営と人事がこまめにコミュニケーショ
ンを取り合っている印象を受けます。経営からの指示で(指示を受けてから)
動き始める人事ではなく、経営に絶えず情報を提供している人事という感じで
しょうか。そういう意味で、経営と人事の距離感が近く、経営と人事が上下で
はなく、ヨコに並んでいるような印象を受けます。

 雇用不安が叫ばれるような現状を鑑みると、経営と人事に距離感がある企業
が多く、経営が決定した計画を実行する部隊としての人事は存在するが、経営
に影響力を与え得るような戦略的・企画的な機能を有する人事が少ないことを
物語っているように思われます。

 人事を経営の何処に置くかは、経営者の考え方に依るところが大きいと言わ
れます。経営者の考え方によって、距離が決まるのは当然ですが、大事なこと
は、最初に決められた距離を次にどうするかということではないでしょうか?
距離を保つのか、埋めるのか、それを選ぶのは人事の考え方に依ります。人事
部門・人事業務に携わる方々の存在意義も問われていると思われます。

 現在の経営環境を考えると多くの場合、人事部門は慌しい状況にあると思わ
れます。反面、人事部門がイニシアチブを発揮しやすい機会であるとも言えま
す。生き物である企業が環境変化に対応・適応していくための“生命力”の源
は“ヒト”であると考えられます。ヒトを活かし、生命力を高めていくために
は、経営と人事の距離感を埋めることが必要です。経営との距離感が埋まるよ
うな人事・人材開発をつくって行きたいですね。

 今年一年お付き合いいただきありがとうございました。今後ともご愛顧の程、
よろしくお願いいたします。良いお年をお迎えください。


             (2008/12/22 人材開発メールニュース第512号掲載)
                          humanize:吉次 潤


Go to Back Number Index
Go to Top Page