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2008年・就職指導の現場から
 今年の就職戦線は、ほぼ終盤戦を迎えたようである。今年の採用活動は例年
通り早期に始まって、早期に手仕舞いになった感がある。私が採用に関与した
企業は規模の大小を問わず採用活動終結に向かっている。

 某就職情報サービス会社のモニター学生の状況によると、5月1日現在の内々
定率63.0%、平均内々定社数2.1社とのこと、これは前年から見ると内定率で
2.7ポイントダウン、内定社数も0.1社低い。新卒求人倍率2.14倍の横ばい状態
を見ると、ここ1−2年の「就職温暖化現象」「売り手市場」も一部を除いて
終焉に近づいている感じもしないでもない。

 事実、景気の減速感、原料・資源・原油高に代表される経営環境の厳しい状
況を色濃く反映してか、採用活動の厳選傾向が増してきたことを学生も敏感に
感じ取り、内々定を獲得してからの早期の就活終了宣言が相次いでいるようで
ある。「もういいじゃないか」と言っても、更に就活を継続する学生が多数見
受けられた過去2年とは様変わりに感じる。

 先日、長く指導している大学で、今期の打ち合わせに行った折、続々と教え
子たちが報告がてら挨拶に現れた。話を聞くと比較的志望順位の高い企業から
の内定で満足して、やはり打ち止めとする意見が相次いだ。昨年なら、地銀当
たりの内定では我慢できずない(というよりも環境の追い風を活用して更に強
気に攻める)学生が多く見られたが、今年は「もう十分」と考えている学生が
多かった。

 それでも強者は内定を8つ抱えているし、顔を出した学生は計8人いたが、
平均内定社数は3.2社と十分に時代の風を謳歌し享受した学生といえる。一部
には、現状の内定が不本意と考えて就活を継続している学生もいたが、全体の
基調としては春時点の内定さえ大変だったという感想とともに、終結に意識が
向かっているようだ。中には「本当にそこでもいいの?」というレベルの学生
もいたが、それは口に出してもやむを得ないことと自制した。

 少子高齢化社会は、若年労働者の慢性的な不足を構造的な問題として抱えた
社会でもあり、その傾向はここ数年、大きな変動はないだろうことは想像に難
くない。しかし、やはり何と言っても景気や時代がその就職に左右される。
「一年早く生まれたら…」「一年遅かったら…」の言葉も常に聞かれ、生まれ
てくる時を選べないからこその悲喜交々が現実に存在する。

 でもなあ、洞爺湖サミットが開かれるからでもないが、「就職温暖化現象」
はもう少し続けてあげたかったなあ。


             (2008/07/21 人材開発メールニュース第491号掲載)


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