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自らが自らを律する時代
 ご覧になったかたも多いと思うが、6月中旬の夜、NHKのインサイダー取
引問題の検証テレビ「NHK職員株取引問題・第三者委員会調査報告書を受け
て」を見ていた。評論家の立花隆氏、ジャーナリストの嶌信彦氏がゲストで、
NHK側は会長・副会長が対応するというものだった。確かに立花氏の「深刻
さを感じない」、嶌氏の「体質が問われている」と手厳しい批判めいた言葉は
多々あったものの、議論は最後までかみ合わない番組であった。

 NHK側および第三者委員会側は、そもそも3人の当事者がこのような行為
に及んだのかの事件の全容を解明する姿勢が見られないし、更なる調査は行わ
ない、調査に協力しなかった943人はそのまま放置するという、何のための
調査であり。何のための番組なのか理解不能に陥ってしまった。また、会長は
再発防止委員会やコンプライアンス委員会などハコものは作らないといいなが
ら、掲げた諸施策はハコもののオンパレード、その矛盾すら気が付いていない。

 一方で、検証映像を見ての立花氏の鋭い指摘にも何ら直截的に答えることは
なく、また、立花氏も「採用方法に問題があるのではないか」と、これまたか
み合わない結論付けで終始してしまう。議論は常に平行線。NHKの用意した
映像は予定通りに流し、表面的な再発防止の取り組みを強調して終わる。なん
ともやりきれない番組であり論理性は微塵も感じなかった。流される映像も自
組織防衛の魂胆が見え隠れして、報道番組とは程遠いものに映った。最後に、
数々の再発防止策が羅列されていてもその納期は示されず、最後に、検証番組
をこれからも放映すると示していたが、再調査もしないで何が報告できるのか
疑問であり、この番組で幕引きを図る意図が見え見えであった。

 しかし、この番組を見ていて思うのは、NHK会長は民間経営者出身という
ことだが、その見識や危機管理意識など微塵も感じなかった。「この人で大丈
夫?」というのが率直な感想だ。また、司会の女性アナウンサーもひどかった。
ただの自社の都合に合わせた台本読み、いない方がマシな存在で、それからこ
の人がニュースを読む場面はチャンネルを変えることにした。副会長に至って
は何ら権限も発言権もないのか、発言は終始、抽象論、精神論にとどまり存在
感は皆無であった。

 話は変わるが、東京都が打ち出した温室効果ガスの企業への削減義務条例、
都内では東京大学が第1位の排出量を誇る?が、当事者のNHKは第6位に位
置する。その手の報道を見ていても、東大、第2位の羽田空港への取材はする
が、NHKの削減への取り組みは報道すらしない。夜9時代のニュースでもN
HKの男性キャスターは一般論を偉そうに話すが、「では自らは…」の視点は
一切ない。上も上なら組織も下も…そんなものなのだろう、この会社では。

 自らが自らを律する、それが問われる時代でもあるのに。


             (2008/07/07 人材開発メールニュース第489号掲載)


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