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説得力を高めるために?
 私の周りには、30歳前後のビジネスマンの方々がよく遊びに来てくれます。
遊びに来るといっても、仕事上での悩みなどを相談にするケースが多いのです
が、先日その中の一人、A君から「もっと説得力を高めたい、そのためにはど
うすればいいですか?」という質問を受ける機会がありました。

 直感的でありますが?、私のイメージとA君のイメージが異なっているよう
な印象を受けましたので、先に彼に「説得力を高めるためには、どんなことが
必要だと思う?」と質問しました。そうすると彼は、「アバウトなイメージで
すが、ロジカルな考え方や話し方などが必要だと思います。」と答えてくれま
した。

 A君の回答は間違いだと思いませんが、何かが抜けているような印象を受け
ました。抜けている何かというのは、個人的な考えではありますが「相手の信
頼感・安心感」といったものになります。もう少しわかりやすく言えば、A君
は「ロジカルな考え方や話し方→説得力向上につながる」と考えているのに対
し、私は「ロジカルな考え方や話し方→相手への信頼感・安心感を生む→説得
力向上につながる」という感じでしょうか。

 私の周りに遊びに来てくれる若手の方々(勉強熱心で、知的好奇心が強く、
ビジネススクールなどに通う方々)は、A君と同じような回答をする傾向が強
い印象を受けます。スキル(この場合ロジカルな考え方や話し方など)を高め
ると上手くいく、逆にスキルを高めなければ上手くいかないと考えている傾向
が強いような印象を受けます。

 説得力を高めるために、ロジカルなスキルを磨くことは勿論必要ですが、や
はり相手あってのことだと言えますので、その前提として「相手のことを理解
する・尊重する」ことがまずは必要ではないでしょうか。「ロジカルな考え方・
話し方を磨く」ことと「相手への信頼感・安心感を生むことを磨く」ことでは、
やはりアプローチが異なってきます。スキルを磨く、知的武装を図ることは、
積極的に取り組んで欲しいと思いますが、絶えず「何のために」という視点を
持っていないと、折角、身に付けたものが活かされないように思われます。

 特に対人・ヒューマンスキルと言われるものについては、相手によって有効
な方法が異なります。ただ単に知的武装を図るだけでなく、「何のために、誰
に対して」という視点をもう一度見つめることも必要ではないでしょうか。


             (2008/06/30 人材開発メールニュース第488号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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