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○○世代考
 前回に続いて、佐藤孝夫のちょっと気になることコーナー、別名、重箱の隅
をほじくる些末なことチェックコーナー(いつからこんなコーナーできたのだ
?)を続けたい。

 今回の気になる事柄は「○○世代」である。
 昔でいえば、「全共闘世代」「団塊の世代」などが有名な世代を表す言葉で
ある。広辞苑を引くと「生年・成長時期がほぼ同じで、考え方や生活様式の共
通した人々。また、その年代の区切り。ジェネレーション」とある。

 ○○世代で我々の耳に新しいのは、ボストンレッドソックスの松坂大輔投手
を冠にする「松坂世代」である。1980年〜81年生まれのスポーツ界や芸能界で
実績を持った人たちの集まりを指し、プロ野球でいえば、ソフトバンク和田、
新垣、杉内、横浜・村田、阪神・藤川、巨人・木佐貫、広島・梵、ファイター
ズ・森本などが同世代に属する。藤川を始めかなりの実力・実績の錚々たる選
手ばかりであるが、その中でも甲子園やプロ入り後、そして大リーガー移籍関
連でも際立った実績をもつ「松坂」を総評してのネーミングであることはよく
わかる。

 一方で、私は常に思うのだが、「花の80年組」や「甲子園ベスト8組」とい
った年代や行動の集合で評されるのではなく、自分の年代を傑出した一個人の
名前でひとくくりにされることに対象者たちは一体どんな気がするのだろうか
ということである。たぶん同世代に属する人は「所詮、マスコミが煽っている
こと」と歯牙にもかけず気にもしていないとは思うが、どこかの場面で「俺っ
てさあ、松坂世代じゃん…」などと言っている奴がいるかと思うと少々背筋が
寒くなる。

 ちなみに平安時代末期の歌人・西行法師は、あの平清盛と生まれ年が一緒、
保元の乱39歳、平治の乱42歳、福原遷都63歳、壇ノ浦での平家滅亡68歳と「平
清盛世代」である。二人はある時期、役所で同僚として過ごした時期もあった
という(「非凡者 光と影」中西進著 時事通信社より)。晩年になるほど実
績を残した人物と、晩年は大きく転げ落ちた人物とどちらの世代といったらい
いのだろうか。

 また、朝日新聞「ロスト・ジェネレーション」では対象層を70年代初頭から
80年代初めの25歳から35歳に位置づけている。松坂世代も終盤期だが含まれる。
同書では同世代の人たちに「名前をつけるとしたら」という問いかけをし、実
にさまざまで的を得たネーミングをしている。どれも部分的にはすばらしいが、
全体を指したものではない(たぶんに10年間という長い期間を対象にしている
からでもあるが)。その中で一際目を引く回答があった。「名前をつけられる
のが嫌な世代」−これが本当なのかもしれない。


             (2008/06/23 人材開発メールニュース第487号掲載)


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