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人材育成力低下と会話構築
 最近、私がお手伝いしている企業で、仮称「会話構築プロジェクト」(?)
という試みを実施しています。具体的には、30歳前後の中堅社員と言われる方
々に、毎月テーマを与え、自分の部署にいる後輩社員にインタビューを行い、
レポートを提出させています。レポートの内容は、インタビューした内容と併
せて、後輩の答えた内容が自分の予測と一緒だったかどうかを必ず付け加えて
出すようにしています。

 「会話構築プロジェクト」をスタートしたきっかけは、職場でリーダーと呼
ばれる30歳前後のメンバーに研修を行った際に、日頃の悩みとして「後輩指導
を行う際にどのように接すればいいのかわからない」という意見が多かったた
めです。
 結構安易な発想ですが、接し方がわからなければ、テクニカルな指導方法を
トレーニングする前に、もう少し接点を増やそうということでスタートしたも
のです。甘やかし過ぎと批判を受けるかもしれませんが、無理やり会話をつく
ると自然と日常の会話も増えていくので面白いものです。プロジェクトをスタ
ートする前と比べると職場での会話の量が確実に増えていると実感してます。

 最近、企業・組織の人材育成力が低下しているという話を良く聞きます。大
手企業を中心に新卒を大量に採用する一方で、直接指導にあたる中堅社員・先
輩社員と言われる30歳前後の社員は、新卒採用が抑制されていた時代に入社し
たこともあり、これまで後輩指導にほとんど関わることなく過ごしてきたとい
う背景があります。これまで後輩・部下を持たなかった人が、急に後輩・部下
を抱え戸惑っているという話も良く聞きます。
 またIT環境が整備される中で、特に会話をしなくてもメール等のやりとりで
情報が伝達されることが当たり前になっています。たしかに情報は発信・受信
されていますが、発信・受信した情報を理解したかどうかは後回しになってい
るようなケースも散見されます。

 私の主観かもしれませんが、人材育成力が低下しているという話題が出る企
業は、社員同士の会話が少ない印象を受けます。前述の先輩−後輩の関係でも
そうですが、教える教えない以前に、そもそも会話が少ないという印象を受け
ます。そのため前述の「会話構築プロジェクト」をスタートさせたわけですが、
会話を増やすことで互いの理解が深まり、多少の例外もありますが、話しやす
く、教えやすくなっているようです。

 習うより慣れろではありませんが、コミュニケーションにおいては質も大事
ですが、最初から質を追求するよりもまずは量を拡大・確保することも必要で
す。特に人材育成が低下していると危機感を持つ職場においては、「育成が上
手く行っている、いない」の前にコミュニケーションが成立しているかどうか
を確認することも必要だと言えます。


             (2008/03/24 人材開発メールニュース第475号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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