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辞めること前提にした就活?
 昨年末から、吉例の大学生への模擬面接が続いている。各種報道や先輩たち
からの伝聞で、自分たちが「売り手市場」にあると認識しているのか、昨年度
と比べて大幅に参加者を減らした大学もあれば、参加者は増えたが、どこか弛
緩していて緊張感のない模擬面接になっている学校もある。

 今や数字的にみれば、あれこれ文句を言わなければ企業へも「全入」の時代。
よっぽどのことがある学生でなければ全員が就職できる。とはいうものの、大
手や人気企業のハードルは高く厳選の傾向は強い。まもなく脳天気な学生たち
もその現実に直面する。

 現実といえば、昨年も大学での授業で毎回、課題レポートを書いてもらった。
その中の一つのテーマで「5年後の私」を取り上げた。今、3年生である彼ら
彼女らの5年後は順調にいけば入社3年目である。出題意図は、働いている姿
をどのくらい具体的にイメージしているか、キャリアプランやライフプランを
描いているかといったことを目指したのだが、常に結果は別の発見につながる。
というよりも意図通りになったためしがない。

 全部で300人近い学生にレポートを書いてもらったのだが、その内の約3割、
100人近くが「3年後は最初に入った会社を退職している」と書いていたのだ。
具体的に自分の働きぶりを描けないのにもかかわらず、既に退社している自分
をイメージしている…これにはいささか、たじろいだ。

 彼ら彼女らは、3年以内に辞めることを前提に、就活に立ち向かっているの
だ。もちろん退社の理由は明確さに欠ける。表現も「たぶん…」「辞めている
と思う」が多い。更に驚くのは、多くの文章が「辞めていると思う」で終わっ
てしまってその後の展望なり「転職してる」といった言葉につながっていかな
い。刹那的というか、その場・その時主義といったらいいのか、お気楽という
のか、こちらが途方に暮れるばかりだ。

 この傾向は多分、私の教えている学生だけの傾向ではないだろう。以前、新
聞で昨年4月に入社した新入社員が、5−6月くらいから転職会社に登録する
ことが急増していると書いてあった。入社早々、見切りをつけてしまうのだろ
う。不況でも好況でも早期退社の現象面だけは変わっていない。

 水面下にそうした不穏な意識を隠して、彼ら彼女らの就活が始まる。


             (2008/01/21 人材開発メールニュース第466号掲載)


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