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教えてもらう力
 最近、新入社員フォロー研修を終えた企業の教育担当者から、入社時に比べ
ると新入社員がおとなしくなったという話をいくつか聞きました。社会人にな
って、様々な壁にぶつかり、少しずつおとなしくなったのでは…という内容が
多かったようですが、その中で、一つ興味深かったのは、新入社員は仕事を覚
えることよりも、教えてもらうことに戸惑っているという話でした。

 学生時代は教えてもらうことは当たり前で、特に教えてもらうことに苦労す
ることは無かった言えます。しかし、社会人になると何か一つ教えてもらうに
も、簡単にはいかない、そういう部分に戸惑いを感じている新入社員が多いよ
うです。教育・研修体系が整っている企業であれば別ですが、基本的に現場で
学ぶOJT主体の企業(職場)においては、どうしたら教えてもらえるのか、
そのきっかけを作ることに、悩んでいる社員も多いようです。

 その裏返しかもしれませんが、第二新卒クラスが転職する際に、転職先への
希望事項として、教育・研修体制が整備されている企業、しっかり教えてくれ
る企業に入社したいという意見が増えています。

 実際、私が担当した新入社員フォロー研修で「上手な教えられ方」をテーマ
の一つとして実施したところ、私の想像以上に受講者の反応が真剣だったこと
には、少し驚きました。内容的には、教えてもらう際の態度・聞き方・聞くタ
イミング・教えてもらった後の報告など、基本的な内容を確認しただけですが、
受講者である新入社員が、真剣に耳を傾けていたことが印象的でした。

 大手企業を中心に現場での人材育成力が低下していると言う話題がよく取り
上げられます。その背景には、バブル期に採用した世代が管理職に登用されて
いることが挙げられます。多くの企業では、バブル期の大量採用以降、極端に
採用を抑制したこともあり、その世代は、これまで部下や後輩が極端に少なく、
指導・育成する機会も極端に少なかったと言えます。しかし、管理職に登用さ
れ、指導・育成に取り組むことが求められる一方、経験が乏しいために悪戦苦
闘している管理職が増えていると言われています。

 教えることに慣れていない管理者層、教えられることに慣れきっている新入
社員の間でギャップが生じるのは、当然のような感じです。教え慣れていない
管理者層に対して、指導・育成力を高める試みも必要だと思われますが、同時
に新入社員に「教えてもらう」スキルを高めることも一つの方法だと言えます。
「教えてもらう」ことも教えなければならない?どこまでやるかは、様々だと
思われますが、教えられる側のスキル・力を高めることで、人材育成が効率的
になることは、たくさんある言えます。皆さんの周りではいかがですか?


             (2007/11/26 人材開発メールニュース第459号掲載)
                          humanize:吉次 潤


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