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大学・学部名の動向
 大学が仕事場の一つということもあり、「大学」に関する書籍へ反応する。
 最近読んだのが、「最高学府はバカだらけ」―全入時代の大学「崖っぷち」
事情―(光文社新書 石渡嶺司著)である。最近の大学事象、学生像を痛烈に
批判、要はバカにしている書だが、内部にかかわっているだからこそ面白く読
めた。

 岡山にあるのに「環太平洋大学」、秋田にあるのに「ノースアジア大学」と
校名の摩訶不思議さを取り上げるとともに、「圧迫面接もどき」と対した質問
でもないのに圧迫されたと感じる学生など、目の前にいる学生を思い出してし
まう。

 サブタイトルにもあるように、少子化の進展、全入時代の到来により大学の
生存競争は厳しい。そのために新設学部学科、学部学科の改変・再編などに各
大学は知恵(?)を絞る。その結果、珍大学名もさることながら、学部学科に
さまざまな工夫を施しているようだ。背景には学生募集でのアピールもあるが、
許認可を握る監督官庁の「既存の学部学科名ではダメ」というご意向もあるよ
うだ。

 ちなみに私の関係している大学でも「日本で初」の学部タイトルを謳い文句
にしている。曰く、「経営」「法学」「経済」「情報」などの既存のネーミン
グの足し算で学部名を創作(?)している。面白そう、学際の撤廃、融合の学
問が学べると思いがちだが、学生に聞くとそれぞれを別々に学んで決して融合
はしていないのが実状のようだ。

 以前、痛ましい事件で話題になった京都のマンガ学部のように変わり種学部
が増殖しているようだ。学んでいる学問はどうかはわからないが、危機管理学
部、食産業学部、ライフデザイン学部安全安心生活デザイン学科、世界遺産学
部といった今様のテーマを扱う学部もある。中には「サービスと経営学科」と
「と」が入る日本唯一の学科を売り物にする大学もある。これなど既存の名前
を使ってはいけないという指導の賜物のようなネーミングである。

 シティライフ学部、現代ライフ学部といった何を学んでも学問だというもの
もある。両学部とも都市部にある大学でないのが面白い。人間科学学部はなん
となくわかるが、人間キャリア創造学部、女性キャリア学部となるとキャリア
を学ぶのが目的になり、大学で学ぶことがキャリアの一部であると考えれば混
乱してくる。

 横文字ネームも横行してきた。グローバル・メディア・スタディーズ学部、
グローバルエンジニアリング学部、ホームエレクトロニクス開発学科なんてい
うのがある。ちなみに、私の地元の大学にリベラルアーツ学部というのができ
た。すると近隣の大学にリベラルアーツ学群というのがあることを知る。こう
なるとライバルつぶしのためかと勘ぐってしまう。それともお互いが近いので
教授陣を共有できると効率的とでも思ったのか?

 何でもそうだが、ネーミングよりも中身、まして大学4年間入学金も含めれ
ば500万円以上の投資だろう。全入の時代、どこ(ラベル)を出たかも大切
だが「何を学んだか」が問われる時代。大丈夫だと思うが、ネーミングに見合
った教育を期待したい。


             (2007/11/19 人材開発メールニュース第458号掲載)


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