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苦情・クレーム博覧会
 このところ、月1回のペースで福井市に仕事で通っている。仕事をする場所
が、たまたま福井商工会議所ビル内にあり、会議所の事業案内を眺めていたら
面白いものを発見した。まず案内パンフのキャッチコピーが「あなたの苦情、
買います」とあり、それだけで「おや?」と思わせ、思わず手にとって読んで
しまった。

 このパンフは福井商工会議所が運営している「苦情・クレーム博覧会」とい
うホームページの告知で、消費者が投稿したさまざまな苦情・クレームを企業
側が閲覧できるもの(有料)で、企業は製品・サービス開発や改善・向上に活
用できるものである。詳しくは、 http://www.kujou906.com を参照。
 とてもユニークだし、ともすれば敬遠しがちのクレーム・苦情を真正面から
受けとめ、活用していこうという姿勢に共感を覚えた。

 多くの企業で、クレーム・苦情を積極的に製品開発やサービス向上に活用し
ていこうという試み、取り組みがなされている。一方で、クレーム・苦情を忌
みべきものと見なし、無視する、受付部署のたらい回しにする、一担当の対応
で終わらせて全社的にクレーム・苦情を取り込んでいこうとしない企業も多数
存在する。「牛乳飲んでお腹をこわしたんですけど」「牛乳でお腹をこわすこ
とはよくあることです」と、一本の電話を軽くあしらった大企業が市場から消
えた事例も記憶に新しい。もちろん中には“クレーマー”という意図して企業
に苦情・クレームを言ってくる場合もあるが、それは極、少数に限られるので
はないか。

 私は「苦情」を「苦い情け」と解釈することが大切だと思う。その会社が好
き、その製品が気に入ったから買ったという消費者(現在もしくは将来の愛顧
者、ファン)が、会社や製品に対して心を鬼にして(もっと良くなって欲しい
から)情けでクレームを伝えたと思う必要があるのではないか。しかし、その
情けも、相手から冷たくあしらわれると敵意、反発に変化し、2度とその会社
の製品を買わなくなるまでに発展する。

 また、クレーム・苦情は消費者が使って初めて出てくるものであり、そこに
は製品開発・改善のヒントが盛りだくさんに埋まっているものでもある。それ
を活かさない手はない。
 クレーム・苦情は来た瞬間は誰もが顔をしかめる対象だろう。しかし、それ
を消費者からの「情け」と受けとめ、謙虚に耳を傾け(もちろんお詫び、謝罪
が先だが)、「消費者からの次の製品開発、改善、サービス向上のためのプレ
ゼント」と受け入れ活用していく企業がきっとマーケットを味方にできる企業
になるのではないか。


             (2007/09/03 人材開発メールニュース第447号掲載)


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