Back Number

相手の弱みにつけこんで…
 5月中旬、三菱東京UFJ銀行の行員が強制わいせつ容疑で逮捕された。記
憶にある方も多いと思う。

 容疑者は新人採用担当者(俗に言うリクルーターだろう)を装い、国立大の
女子学生に「あなたの評価は高い。応援したい。」などと言って大阪市内のカ
ラオケ店に呼び出し、店内で抱きついたりキスをしたということだ。いわゆる
「相手の弱みにつけこんで…」という犯罪だが、同様の手口の被害が数件確認
されているということで余罪も多いようだ。噴飯ものの事件だ。

 弱みにつけこんで…とはいうが、この銀行も含めメガバンクの大量採用は続
いているし、他業界他社の採用意欲も高い。世の中は売り手市場の様相だ。こ
の女子学生は二次面接の結果待ちだったようだが、のこのこと出かけていく必
要があるほど「弱い立場」だとは思えない。本当の採用担当者であったとして
も、こんな唾棄すべき手段で学生を呼び出す銀行の胡散臭さを察知して、選考
辞退してもいいくらいだ。とはいうものの、個々の学生にとっては大手銀行の
内定確保のチャンス。少しでも内定獲得に有利になればとの思惑はわからない
でもない。

 実は、私が運営している学生向けサイトにも、この類の相談が年数件、やっ
てくる。今年も2月と3月に1本ずつきた。当然ながら女子学生で、一人は本
物の採用担当者らしく、携帯のメールに何度も「○日夜、ここで待っているか
ら来なさい」の連絡。それも場所は有名シティホテルの一室。そこは「採用用
の特別面接会場」だという。行く必要はなく、アドレスも変えるよう言った。
そして学校の就職部に企業名と内容を報告するように話した。後日、この学生
から連絡があり、その企業には選考辞退を申し入れたとのこと。しかし、大学
が何らかの手を打ったかどうかはわからないという。かなりの大手企業だった
が、多くの学生を採用してもらい、今後のことも考慮して内密に済ませたか。

 もう一件の相談だが、大学の対応に疑問を持つケースもあった。同様の呼び
出しがあり、学校にメールで相談したところ、「いいチャンスだから行ってき
なさい」との返事、それで学生が困ってサイトを通じて私にメールを送ってき
た。私はハッキリと「行くのは止めなさい」と返事をした。その後、その学生
からは連絡は途絶えたが、何もなかったことを祈るばかりだ。

 件の銀行員のケースは表沙汰になって事件に発展したが、もしかしたら水面
下、闇の中で同様の事件が多く起こっているかもしれないと思うと、憤りさえ
感じる。純粋、不純は置いておいて将来の夢を抱いて応募してくる学生に、自
らの地位を利用して自己の欲望を満たそうとする人たちは恥ずかしいとは思わ
ないのだろうか。思わないから、やっているのか。


             (2007/06/04 人材開発メールニュース第435号掲載)


Go to Back Number Index
Go to Top Page