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歴史は繰り返す?バブル採用・就職
 3月上旬で学生相手の模擬面接の試練も一段落した。
 ここ数年、延べ1000人から多いときで1200人と模擬面接で対峙して
きたが、企業の採用活動が早まっているようでもあり、また、学生自体が「売
り手市場で就職は楽だろう」と甘く見ているのか、今期の延べ面接者は800
人を少々超えるに留まった。日々、体力減退、脳みそ空洞化に悩む私としては、
楽をさせてもらったとともに拍子抜けの春を迎えた。

 売り手市場の環境を反映してか、今年会った学生の面々は、銀行や大手製造
業志望が目立った。某大学では例年100人程度と模擬面接するが、毎年、銀
行志望で2−3人、文系なので製造業志望は10人もいれば普通で、就職課の
職員とも製造業の盛んな地域だから製造業志望を多くしたいね、あまり低いと
ころばかり狙わずに、せめて地銀クラスを応募してほしいねと話し合っていた
くらい志望が少なかったのだ。

 ところが、今年は銀行志望が25人、製造業志望が35人と2つの志望業界・
業種で6割に達した。反面、常に半数近くいた小売業、外食、サービス業志望
が激減して総数でも2割に満たない。地方の中堅大学だが、全国の就職戦線の
傾向を示している。

 考えてみれば、メガバンクで新卒採用実績・予定は1000人を優に超え採
用意欲はますます盛ん、地銀クラスでも100人―200人に達する。採用選
考の厳しさはさまざまだが門戸は確実に広がっているうえ、採用確率も確実に
高まっている。金融機関からのネットを通じたアプローチも熱いという。

 加えて、この大学では「あの程度の学生が…」と思っていたのが、今年、地
銀の内定をもらったこともあり、「なら俺でも…」と判断して勘違いしている
学生も多く見られた。また、この勘違い学生たちが、間違ってとは失礼で言う
つもりはないが内定を獲得でもしようものなら、もう抑えは効かなくなるので
はないか。

 その勘違いを反映してか、志望動機はいささか心許なく情けない。「子供の
とき店頭でティッシュをもらって感激したから」「カウンターで優しく貯金通
帳の作り方を教えてくれたから」「お金は生活に大切だから」と、小学生の社
会科の授業みたいな科白が続く。当人たちはそれで通用すると思っているから
怖い。

 とはいえ、大学の体面もあり、そのまま世の中に出す訳にはいかない。軌道
修正を試みるのだが、認識が甘いうえ「御行が第一、地元に貢献したい、地元
の人たちの役に立ちたい、地元の人と触れあいたい」と言えば効果的とどこで
知ったのか、それを強調してやまないワンパターン現象まで露見してしまった。
心と頭の芯から痺れ始め疲れがどっと押し寄せる。こちらがぶち切れそうにな
る。

 いつか来た道、歴史は繰り返す…私はバブル採用・就職のときにも採用の最
前線にいた。今、あれほどの高揚感やバブリー感はないものの、そこかしこで
当時と同様の光景に出くわす。そのうえに、3年以内に3割辞める現実も重な
る。
 彼ら彼女らがバブル社員として、泡とならないことを祈るばかりだ。


             (2007/03/19 人材開発メールニュース第425号掲載)


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