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履き違えた個性・自分らしさ
 最近、入社2年目から5年目ぐらいの若手社員と呼ばれる人と話をする機会
がありました。若手社員の傾向として、「早く周囲から認められたい」そのた
めに「自分らしさ」を発揮したいと考えている人材が増えているような気がし
ます。世間一般?にも自律した社員を求める中で、「自分らしさ」を追い求め
る傾向は、悪いとは思いませんが、中には、その考えを履き違えているように
感じることもあります。

 新入社員や若手社員の研修の場面においても、他人の意見にあまり干渉しな
い傾向が増えているように感じることがあります。他人の意見を一方的に否定
するのも困りますが、研修の中においても、意見を戦わせるような傾向は減っ
てきているような感じを受けます。

 「私は私、他人は他人」という言葉ではありませんが、自分のことは大事に
しながら、他人とは一線を引いていると感じることもあります。自分らしさ=
個性を発揮するということは、あくまでも全体(周囲・集団)の中で発揮され
るものです。言い換えれば集団があるから個性が発揮されるのであって、前述
の「私は私、他人は他人」というような自分と周囲の間に線を引いている状態、
自分だけの世界に身を置くような姿勢では、個性が発揮されているとは言えま
せん。

 個性を発揮する上で一番大事なことは、多様な価値観を受容するということ
ではないでしょうか?そのためには、自分の考えを持ちながら、周囲に働きか
けることが必要です。周囲の考えを理解し、尊重することが必要になります。
前述の「自分らしさ」を履き違えていると感じさせる人は、周囲の考えは認め
ずに、自分の考えを持つだけの人が多いように思われます。

 逆に若手社員を育成指導する立場で考えると、周りへの働きかけが少ない人
材を発見した際には、少しでも周りに目を向けるように導くことも必要だと言
えます。
 専門性を重視する傾向が強くなる中で、他人・他部署・他部門の動きに関心
を持たなくなっている、見え難くなっているケースも増えているように思われ
ます。若手社員の育成に限ったことではありませんが、今一度、組織全体・会
社全体に目を向けさせる、全体観を醸成するような取り組みを増やすことも必
要ではないでしょうか。


             (2006/11/27 人材開発メールニュース第410号掲載)
                         WISEPROJECT:吉次 潤


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