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2008年卒就職戦線スタート
 また大学生、短大生相手に悪戦苦闘する時期がやってきた。
 この10月から2大学で非常勤講師としてのキャリア開発、就職活動指導が
始まった。印鑑片手に出勤簿にハンコを押し、出席カード配布に回収、毎回書
かせる300枚近いレポートの添削。そして年末から体力勝負、無制限一本勝
負の模擬面接を大量にこなす日々に突入する。

 ご存じのように、ここ1−2年の就職戦線は「売り手市場」に変貌し、学生
はしっかりと準備さえすれば就職することにさほど大変ではなくなった。私の
お手伝いしている大学は、就職が厳しい時期もそれなりに善戦していたが、今
の4年生は好調で、9月末時点での内定率は昨年同時期よりも15%もアップ
していた。世に言う“内定コレクター”も多数輩出、就職課に行ったら内定を
9個持っていて、まだうろうろしている男子学生が相談に来たくらいだ。

 さて、時代が学生にとって追い風であることは大変喜ばしいことだが、バブ
ル就職期を目の当たりに見てきた私としては、学生諸君には次の2つを大事に
してもらいたいと考えている。

 一つ目は「人手ではなく、人材としての就職」である。言葉は悪いが、猫の
手も借りたいくらいの忙しさ、人手不足の会社がある。そんな会社では、本当
にひどい人以外ならウエルカムに等しい。若く賃金の低い労働力としての採用
は、景気や業績が悪化すれば即リストラ対象、手のひらを返すような扱いを受
けることになりかねない。企業研究はもちろんのこと、採用選考の過程でじっ
くりと企業と対話して「自分が人材として買われているのか」を見極めてほし
いと思う。

 二つ目は「内定の質にこだわる」である。ここでいう質とは、上場企業や有
名企業といった企業の規模や知名度の有無を指すのではない。大手企業であれ
ば、500人、1000人単位で採用する。500分の1か、10分の1かで
は期待値も働きがいも違ってくる。また、従来のように、大手企業がダメだっ
たからベンチャー、中堅企業へ…ではなく、それ相応の実力と準備をしっかり
として自分がアピールできれば、「大企業も、ベンチャーも」内定が取れる可
能性は高い。そうなれば、仕事を通じて本当に自分が成長できるか、自分のキ
ャリア形成に有利かといった“自分にとっての質”を重視することが大切だと
思う。

 こんな私の訴えをどれだけの学生が感じ取ってくれるかわからないが、私の
孤独な戦いが始まったばかりである。


             (2006/10/23 人材開発メールニュース第405号掲載)


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