Back Number 不安・不信を取り除くマネジメント 先日ある会社の社長から、営業部門のマネジャーであるAさんとその部下で あるBさんが、最近上手くいっていないようなので相談に乗って欲しいと依頼 がありました。その会社は、以前から私も良く知っているベンチャー企業で、 一時の急成長が止まり、業績自体も少し伸び悩んでいる企業です。AさんとB さんは、営業部門だけでなく、会社全体を引っ張っていくムードメーカー的な 存在で、周囲からも名コンビと言われている二人でした。 早速二人からそれぞれ話を聞いてみました。お互いに色々な話をしていまし たが、要約すると下記のような内容でした。 上司であるAさんは、「B君は一生懸命仕事に取り組んでいるけど、結果が 出ていない、残念だけど最近できていないんだよね」。一方Bさんは、「結果 はまだ出てていませんが、一生懸命に取り組んでいます。自分なりにできてい ると思います。」と言っていました。 上司のAさんは、B君に対して「できていない」と感じているが、B君自身 は「できている」と思っている。この企業に限ったことではありませんが、こ のようなすれ違いは、よくあるように思われます。 組織を運営していく上で、重要なことはマネジメントサイクル(P→D→C) を適切に回していくことです。特にP(PLAN)の部分においては、目標・期待 役割が明確化かつ共有化されていないと、自己評価と他者評価が異なり、少し ずつ組織の中に不安と不信が芽生えてきます。言うまでもありませんが、不安 感・不信感が存在する組織において良いパフォーマンスは期待できません。 前述の例でいくと、上司のAさんは「結果を出す」ことを期待しているにも かかわらず、部下のBさんはもしかすると「一生懸命に取り組む」ことが何よ りも大事だと考え、自分の行動に満足感をもっているのかもしれません。どち らが正しい、間違っているということではなく、目標・期待役割の認識にズレ (ギャップ)があると認識し、修正していく必要があります。 業績が好調な時期には、多少のズレ(ギャップ)に関しては、黙認できるか もしれませんが、業績が伸び悩み始めた時期には、些細なズレ(ギャップ)が、 これまで良好だった人間関係に軋みをもたらし、お互いに感じ始めた、不安感・ 不信感は増幅される一方で、悪循環に陥っていくことは、よくあることです。 人材開発において、モチベーション・マネジメントという言葉に代表される ように、部下のやる気をいかに向上させるかということは、重要なテーマです。 モチベーションを上げるためにどうするかを考えることも勿論必要ですが、そ の前提として組織や部下の不安感・不信感を取り除くことを考える必要があり ます。メンバーが何に対して、不安・不信を感じるか、多少真剣に考えるだけ でも、たくさん改善すべきことが見えてきます。 上司・部下と言う関係に限らず、組織の中で、不安感・不信感をもたらす原 因をフランクに出し合える組織は、信頼関係が強い組織だと言えます。読者の 皆さんの周りではいかがですか? (2006/10/02 人材開発メールニュース第402号掲載) WISEPROJECT:吉次 潤 Go to Back Number Index Go to Top Page |