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個人情報保護法とOB訪問
 8月中旬に読売新聞に「就職OB訪問ピンチ」と一面に見出しが踊った。
個人情報保護法の影響で、企業が大学に対し各大学OBの社員の名簿提供を拒
んでいることからの問題である。当然、個人情報流出の危惧が背景にある。記
事によれば、東京大学が約800社に「OB訪問に限って利用する」としたう
えで、OB名簿の提供を依頼したところ最終的に応じたのは約3割の240社
に留まったという。

 これは由々しき事態だ!という新聞の論調は正しいが、自分の足元を見てみ
ると私が大学で指導している中では、OB訪問をする学生がこのところ大幅に
減っている。東京大学や一部有名・老舗大学ならOBもたくさんいて、各界・
各企業で活躍しているから訪問のし甲斐もあるのだろうが、残念ながら私の訪
問している大学では歴史も浅いし大手企業への入社率もさほど高くないので、
OB訪問もピンとこないのかもしれない。と思っていたら、以前、某老舗大学
のガイダンスでOBOG訪問の話をし、講演後、質問に来た学生が「OBOG
って何ですか?」と聞いてきたことがあり、OBOGそのものの言葉が存在感
を失っているのかもしれないと思ったことがあった。

 OBOG訪問が活用されない最大の原因は、先輩の少なさではなくて、「め
んどくさい」「何を聞いていいかわからない」「ネットで調べられるではない
か」ということではないかと私は踏んでいる。もっと言えば「そこまでする必
要あるの?」てなことだろう。

 ところが、就職活動において、実際に働いている人たち、年齢の近い先輩た
ちの“生の声”を聞くことは大変貴重だ。ネットでの1時間とは格段に価値が
違う。だからなのか、OB訪問が減少の一途に陥っている(私の周りの学生)
のは、入社後の「こんなはずでは…」の増加、結果としての早期退職と比例し
ているような気がしてならない。

 個人情報保護法に照らしてみれば、情報の公開は「本人同意があれば」が可
能とのこと。企業も人手不足解消に向けて採用意欲は旺盛な時代だからこそ、
選抜したリクルーターを本人同意のうえ、親身なOBOG・先輩社員に変身さ
せて活用することは、逆に、他者との差異化にも、入社後のミスマッチ解消に
もつながるのではないか。
 そんな観点からの各企業の取り組みが期待される。


             (2006/09/25 人材開発メールニュース第401号掲載)


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