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採用面接担当者育成の現場から
 「学生にいかに好印象を持たせながらコミュニケーションを促進し、面接本
来の目的である自社に合った(採用基準、コンピテンシー、社風に合致)人材
を発掘・選考するか」、これが人材確保が急務である企業の採用担当の喫緊の
課題であろう。そのための面接官養成、訓練・教育もさかんに行われるように
なってきたし、今後も増加していく傾向だと予想される。

 しかし、一方で、学生と企業との接する場面で、企業担当者が発するメッセ
ージの不統一が学生に不信感や戸惑いを与えていることも確かだ。
 某企業で面接担当者研修をしたとき、社歴を「伝統ある」と話す人と、「若
い」と話す人で2つに分かれた。会社のユニホームの色やデザインの意味合い
でも意見が分かれ、公式見解の大切さを感じたことがあった。結局は、個人の
価値観の相違と言ってしまえばそれまで、どちらでも良いといえばそうだが、
学生からの質問、関心事の一つと考えれば、曲解、誤解、異なる解釈をされる
のは避けるべきだろう。

 また、学生がOB3人にお会いした。3人とも同じ職種の人だったようだが、
彼らが述べる会社のイメージや社風の評価は3者3様、極端に異なる見解を述
べられ戸惑った話をしていた。「多様な社員がいる会社」という評価もできる。
何が何でも「同じことを言え」というつもりは毛頭ないが、メッセージの受け
手はシンプルなイメージを持つことが難しく、入社決定の一ファクターとして
も弱くなる。企業としては、最低限の統一性は持つべきだし、そのうえで個々
の社員の解釈が付加されることが望ましいのではないか。

 なんていうことを考えていたら、既に来期向けの採用活動の準備のために、
リクルーター対象の研修が企画され、会社として「同じことを言って欲しい」
ものと「個々の考え、価値観に任せる」ことを明確に区別していこうという試
みも出始めた。残念ながら、メッセージは発せられたその場から一人歩きを始
める。受け手の価値観や考え方、時には無知から、いかようにも変化してしま
う。曲解、誤解、他からのノイズも加わってマイナス作用に働くときさえある。

 伝え手である我々は、可能な限り意図通りに、あるいは意図した通りに、メ
ッセージが伝わるように工夫、努力をしていく必要があろう。


             (2006/07/31 人材開発メールニュース第394号掲載)


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