Back Number

ノブリス・オブリージュ
 「ノブリス・オブリージュ」、ご存じの方も多いと思うが、指導者や社会的
エリートが持つべき倫理規範を指す。ところが日銀総裁の村上ファンドへの出
資問題で、中央銀行総裁たる人間の品格、倫理観が疑われる事態になった。利
益相当分は慈善団体に寄付するとご本人は言っているか、もし本気でそう思う
なら総裁就任時に解約して寄付していたはずだろう。

 社会保険庁の不正はありゃ何だ。自分たちは共済年金だから関係ないとばか
りにさんざん年金を食い物にしていながら徴収率を上げられずにごまかしで処
理しようとする。役人には倫理観がないと言われてもしかたがないことだろう。

 ところで福井氏は総裁候補と期待されながら、不祥事絡みで一度、外部に出
たことがあると記憶している。そしてこれも記憶のレベルだが、社会保険庁長
官は、つい最近、金融庁から行政処分を受けた損保ジャパンの副社長だったの
ではないか。ご両人とも不祥事とか不正といったものの体質が染みついた御仁
ではないかと思ってしまう。

 私のサラリーマン時代、勤務先の他部署で架空売り上げが露見した。その社
内処分を決める会議に出席しているとき、当時の経営トップが架空売上額を、
「100万円以内か、それ以上か」をしきりに口にしていた。トーンとしては
「100万円以内の不正なら許す」である。私も含めて少数の幹部は、当然な
がら「1円でも不正」を主張したが、残念ながら処分はうやむやになってしま
った。私は不正に対するトップの姿勢に大いなる失望を覚えた。その翌年退社
するのだが退社理由の遠因にもなっている。不正許容をトップが口に出した瞬
間、誰もが100万円以内ならOKと解釈してしまうのを気がつかないのだろ
うか。

 企業の社会的責任、コンブライアンス経営…口にしない経営トップはいない
だろう。いくら制度や仕組みに金を費やし形だけ作ったとしても、その実践は
「ノブリス・オブリージュ」にかかっているといって過言ではない。トップの
一挙一動を社員は見守り、守るべきか守らなくてもいいかを判断しているので
はないだろうか。


             (2006/07/03 人材開発メールニュース第390号掲載)


Go to Back Number Index
Go to Top Page