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株主総会の現場から
 いよいよ6月になると株主総会の季節である。私はこれまでの人生の中で、
自社やお客さまの「社員総会」などには参加したことがあるが、株式にも縁が
なかったこともあるが、株主総会といった類の会合に出たことない。よく株主
総会などの報道で「シャンシャン」総会と揶揄される、筋書き通りの議事進行
とはどんなものなのか、以前から興味があった。

 そんなとき、知人が関与する某組合の総代会に参加する機会が与えられた。
もちろん私は経営側の総代の一人としての出席である。事前に委任状を9通ほ
ど預かり、私の分と併せて私は10票持っているという設定だ。

 開会の挨拶の後、来賓の挨拶があり、とても偉い方が2人祝辞に立つ。見事
なまでの美辞麗句を並べていながら、全く心がこもっていない祝辞はまさに形
式美の様相であった。その後、議長選出になる。どこでどう決まったのかわか
らないが、議長が2人選出される。とても突然指名されたとは思えないような
流暢な語り口。この辺の議事進行はすべて「異議なし」と大きな拍手で予定通
り進んでいく。
 事業報告、監査報告、来年度の事業方針、予算方針、規約改定案件と淡々と
説明が続く。役員改選などの人事案件がないからか聞いている参加者も関心を
示さない。そして質疑応答、株主総会などでは一番緊張する場面なので、私も
身構える。

 まず一人質問に立つ。ところがこれが質問ではなく、いかに経営陣が優れて
いるかの感嘆、賛辞、激励のオンパレード。質問が何なのかもわからなかった。
二人目が質問に立つ。今度は些末、微細な部分に集中し、質問というより質問
者の勉強に過ぎない内容。質問はこの二人が予定されていたのか、議長は質問
への回答が終わるとさっと議決に入る。この当たりのタイミングは見事。

 議決は委任状を手に掲げる。私は10枚の委任状を議長に見えるように広げ
て1案件毎に手を挙げる。反対はほとんどない。まさにシャンシャンしゃんの
幕切れ。2時間の予定が1時間20分で終了の運びとなった。知人には申し訳
ないがもっと質疑応答で紛糾して、大物総会屋のように私が颯爽と登壇して場
を納める、などという展開をちょっぴり期待していたのだが、拍子抜けするほ
どスムーズに終わってしまった。残念無念。

 さまざまな報告を聞いていても不祥事があったわけでもなく大きな問題があ
ったわけでもないので当然と言えば当然なのだろうが、まさに「建前」の世界。
あまりにもきれい事で進んでいくので背中がかゆくなりそうだった。
 まあ、来年誘われても出席しないだろうな。もう建前の世界は十分。私の最
初で最後になるであろう総会体験記でした。


             (2006/06/19 人材開発メールニュース第388号掲載)


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